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2023.3.01
  • CO-CREATION

リアルとバーチャルを繋ぐメタバースで、新たな価値を創出するXR事業にかける思い【Professionals in DNP#2】

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【Professionals in DNP】では、DNPの中で新規事業開発に携わる様々な“ヒト”にフォーカスを当て、事業にかける思いや裏側のストーリーをお届けします。


 

【この記事はこんな企業におすすめ!】

  • XR技術で地方創生に取り組みたい企業
  • 新規事業でXR技術やメタバースを活用したい企業
  • リアルとバーチャルを繋ぐXRの活用を推進したい企業

 

DNPでは、強みである「P&I」(印刷:Printingと情報:Information)と、パートナーが持つ課題やアイデア、技術がコラボレーションすることで、社会課題を解決し、新たな価値を生み出す「P&Iイノベーション」の事業ビジョンのもとXR事業に進出しました。2021年3月から、「地域共創型XRまちづくりPARALLEL CITY(パラレルシティ)」を展開し、渋谷区立宮下公園と札幌市北3条広場のバーチャル空間を立ち上げています。

今回はXR新規事業開発を担うABセンターXRコミュニケーション事業開発ユニット・サービス開発部の小田将史氏と伊藤大智氏から、「XR事業を通して社会や人々の生活に寄り添うサービスを届けたい」という思いをお伺いしました。

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(DNP ABセンター XRコミュニケーション事業開発ユニット・サービス開発部 左:小田将史氏 右:伊藤大智氏)

 

デジタル社会の大きな変遷を過ごした学生時代から、人の役に立つサービス開発へ


ー小田さんは入社当時からさまざまな新規ビジネス開発に関わっていたそうですが、改めてご経歴を教えてください。

小田:大学院時代は情報工学分野で心理物理学を専攻していました。人間の視覚を、知覚と認知の両側面からアプローチする研究に産学連携で取り組みました。研究を通してヒトと情報の相互作用に興味を持ったことから、ヒューマンコンピューターインタラクション(HCI)や、コンピュータービジョン(CV)、コンピューターグラフィックス(CG)に関わる仕事に取り組みたいと思うようになりました。

私が入社した2009年当時は、情報コミュニケーションが急成長していった時代で、スマートフォンやソーシャルネットワークが全世界に普及し、現在ではあたりまえの動画PFやECなどの様々なサービスが生まれて、ビッグテックの企業群が世界を席巻していきました。学生時代に関心のあった技術分野に携わりながら、新しいコミュニケーション体験をつくりたいと志してDNPに入社を希望しました。

入社当時は、VR/ARやインタラクティブメディアが様々なシーンで実用化され始めた時期でもあり、DNPも美術館や博物館、企業施設などでデジタル体験を届ける取り組みをしていました。私自身も新しい技術をプロトタイピングしながら、実在空間を拡張する仕組みを考えて一連のアプリケーションを開発することに、やりがいを感じながら事業開発に取り組んでいました。

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ー現在はABセンターXRコミュニケーション事業開発ユニットにおいて新規事業に取り組まれていますが、どのような領域で活動されているのでしょうか。

小田:社会や生活様式が大きく変わっていく中で、DNPの新規事業開発部門として、XR技術の活用とメタバースをキーワードにビジネス領域を広く捉えながら事業開発を推進しています。私自身は、地域課題や企業課題を解決するとともに、新しい価値創出に向けてビジネス開発とサービス/プロダクト開発の橋渡しを担うチームを率いています。先進技術を活用してサービス利用者の体験価値を向上させる全体デザインを担っています。

ー伊藤さんは2020年の入社からABセンターに配属となりましたが、DNP入社前の学生時代も含めご経歴を教えてください。

伊藤:学生時代はXR技術やロボティクスなどを用いて、人間の認識・行動能力を拡張する「人間拡張工学」に取り組む研究室に所属していました。XRに関する研究の中でも認知科学領域に興味があり、体験者周囲の全天周リアルタイム映像を、体験者に気づかれないようにシステムで工夫しつつ別の映像に少しずつ変化させていくことで、現実ではあり得ないことを主観的にはあたかも現実であるかのように体験できる、サブスティチューショナルリアリティ(代替現実)に関する研究をしていました。

私はもともと数理工学を専攻していたのですが、机上での議論と比較して、より直接人に作用するコンテンツを作りたいとも考えていました。そのタイミングがVR元年と呼ばれた2016年で、私自身もVRを手段としていろいろな表現をしてみたいと興味が湧きました。

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伊藤:DNPに入社を希望したきっかけは二つあります。一つ目は、アートとXRを掛け合わせた事業を担当するDNP社員が、ゲスト講師として大学に講演に来たことです。VRシステムを含むヒューマンコンピューターインタラクションや、認知科学を活用したアート鑑賞手法に関する内容を聴き、VRのビジネスの可能性を感じました。もう一つは、XR技術をエンターテイメントだけに閉ざすのではなく他の分野と掛け合わせることで、人の生活に寄り添い、世の中に役立つ取り組みをしたいと考える中で、DNPのXR事業を知り入社を希望しました。

現在はXRコミュニケーション事業開発部でメタバースを活用し、リアルとバーチャルの空間を連携させた企画の設計・開発に取り組んでいます。

直近の事例としては、2022年に三井不動産株式会社と共創した、謎解きクリエイター集団・RIDDLER(リドラ)株式会社の『松丸亮吾のMIYASHITA MYSTERY PARK 2022 created by RIDDLERがあります。

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実生活の課題解決に取り組むDNPのXR事業


ーDNPのXR事業はリアルとの連動性を重視していますが、その理由をお伺いできますか。

伊藤:DNPの強みの一つとして、印刷(Printing)すなわち「モノ・ハードウェア」と情報(Information)すなわち「コト・ソフトウェア」の両方を担うことができる「P&I」があります。DNPは約30年前の第一次VRブームの頃からVRに関する事業に取り組んでいますが、これも印刷というモノの製造における画像処理やデータ取扱いといったコトの技術を、VR分野に応用したのが始まりです。メタバース事業では施設や地域といったリアルな空間にバーチャルな空間を紐付けたり、両空間それぞれでの表現手法を効果的に用いたりすることで、あらゆる課題解決に取り組んでいます。

小田:XR技術は、独立したデジタル体験ではなく、実生活のサービスとして拡張・融合されていくものとして高い可能性を感じます。この数年間でバーチャル空間上でのコミュニケーションサービスが数多く登場しています。距離や時間の制約を越えた生活サービスが普及すると、将来の地域差や人口動態の変化が起きても、行政・企業の課題解決や高品質なサービスの維持が図れると考えています。DNPもより良い社会基盤の構築に貢献していきたいです。

伊藤さんのようないわゆるZ世代にとっては、ソーシャルネットワークやデジタルコンテンツは既に日常の一部になっており、これからメタバースが浸透していくとすると彼らの新しい価値観が世の中に普及していくでしょう。渋谷区立宮下公園での取り組みの例では、コミュニティの共通項として謎解き体験を軸に場所や施設への関わり方がデザインされました。デジタル体験をあたりまえに捉える世代が持つ新しい価値観により、未来のあたりまえをつくる様々なサービスが生まれることを期待しています。

海外スマートシティ開発におけるメタバース活用の未来


ー2023年1月にベトナムでのメタバースを活用した調査を実施したプレスリリースの発表がありました。調査での手応えを教えてください。

小田:DNPは、丸紅株式会社とPwCアドバイザリー合同会社と共同で、ベトナムのスマートシティ開発においてメタバースを活用したサービス導入可能性を調査しました。DNPはプラットフォーム選定や空間設計・構築、体験会の環境整備の役割を担いました。

スマートシティは都市や施設のインフラを膨大なデータと高度ソフトウェア技術を駆使して、リアルタイムに制御することで利便性を高める文脈があります。今回の調査ではメタバース活用サービスによって新しい都市モデルを提供できるのではないかという期待がありました。施設のインフラにサービス体験のレイヤーを加えることで、地域や居住コミュニティの価値につながり、さらに魅力的なエリア開発が提供できるのではないでしょうか。都市開発に関わる様々なパートナーとともに、継続的な開発をしていきたいと思っています。

伊藤:今回の調査を通して、ベトナムでの展開だけではなく今後の国内外のプロジェクトにも活かせる事例だと感じました。文化に応じてローカライズすることがメタバースの普及に繋がると思います。

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(写真:ベトナム・ホーチミンでの体験会の様子)

 

垣根を越えた共創で生活に寄り添う持続性のあるXR事業へ


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ーお二人の考える、これからのXR事業の展望やDNPが求める共創パートナーについてお伺いしたいです。

小田:これから先、現実空間とデジタル空間を一つに捉える概念が浸透すると、学際的かつ統合的なサービス開発が求められてくると思います。メタバースが近年のトレンドワードとして関心が高まっていることは良いことだと考えており、試行を重ねながらテーマを拡げていくために、様々なパートナーと共同で事業開発に取り組んでいきたいです。

 

伊藤:メタバースは、業界や研究分野の垣根を越えてたくさんの人や企業が取り組んでいます。私もその一人として最前線に立ち、事業開発に取り組めることにやりがいを感じています。例えば、DNPと昔からお付き合いのある企業にもメタバースをご利用いただくことで、その企業のファンコミュニティの形成ができるのではと考えています。こういったDNPの「P&Iイノベーション」を活用して、垣根を越えた共創を推進していきたいです。

 

<取材・編集:多葉田愛/撮影・執筆:三浦えり>

 


メタバースを活用したサービスづくりで、DNPのXRチームとの共創に興味のある企業やご担当者の方は、ぜひコチラからお気軽にお問合せください!