共創パートナー募集
- 聴覚障がいの方も共に体験できるコミュニケーション手法をお探しの企業
- 読み書きや見え方の障がいがある方に伝わりやすい表現手法をお探しの企業
- ダイバーシティ&インクルージョン推進に取り組んでいて、具体的な施策に取り組みたい企業や団体
PROJECT REPORT 活動報告
PROJECT
ユニバーサルコミュニケーション~年齢、障がい、国籍などに関わらず、誰もが暮らしやすく、活躍できる社会の実現~
子どもたちがフォントを選べる未来へ。小学校での出張授業を通して見えた「じぶんフォント」の可能性
DNPは発達性ディスレクシアを含む文字の読み書きに困難がある人にとって見やすく読みやすい「じぶんフォント」の開発プロジェクトを統轄しています。
2023年9月に東京都板橋区・板橋第十小学校の4年生を対象に文字の読みやすさを伝える出張授業を行いました。今回はDNPの「じぶんフォント」プロジェクトマネージャー 金子真由美氏、共創パートナー・渋谷ブレンド代表取締役社長 細目圭佑氏とプロデューサー 碓井隆太氏、板橋区立板橋第十小学校教諭であり一般社団法人まなびぱれっと代表理事の小泉志信氏に出張授業を振り返っていただき、「じぶんフォント」の教育現場導入の可能性についてお話をお伺いしました。
左から:渋谷ブレンド 代表取締役社長 細目圭佑氏、板橋区立板橋第十小学校教諭・一般社団法人まなびぱれっと代表理事 小泉志信氏、
DNP ABセンターICT開発ユニットコミュニケーション基盤開発部 金子真由美氏、渋谷ブレンド プロデューサー 碓井隆太氏
【この記事はこんな人におすすめ】
- 教育現場でのユニバーサルコミュニケーションに関心のある自治体・企業
- 平等な教育機会の提供を実現したい自治体・企業
- 「じぶんフォント」の事業に関心がある自治体・企業
子どもたちにフォントの役割を知ってもらうための出張授業を開催
-フォントの役割を伝える出張授業を開催した経緯を教えてください。
金子:これまで「じぶんフォント」を教育現場に普及するための施策を渋谷ブレンドと共に考えていました。しかし、まずは子どもたちにフォントの役割を伝え、文字の読みやすさについて考えてもらう機会を作りたいと思いました。今回、まなびぱれっとの小泉さんとのご縁があり板橋第十小学校にご協力をいただき、出張授業をさせていただく機会をいただきました。
小泉:私は小学校の教員とは別にまなびぱれっとの代表理事として活動しています。教師と子どもたちが安心して社会に混ざり合う未来を目指して活動しています。これまでも民間企業と学校の橋渡しの役割を担い、わくわくするようなシナジーを生み出してきました。
以前、まなびぱれっと主催で教員と一般の方が一緒に参加し、「未来の授業を作る職員会議」というワークショップを開催しました。その際に碓井さんから「じぶんフォント」を紹介していただいたのが出張授業開催のきっかけです。私以外の教員も「じぶんフォント」の取り組みに共感し、授業でフォントの役割を伝えたいとおっしゃってくださいました。
-出張授業の具体的な内容を教えてください。
碓井:まずは金子さんがフォントの役割について説明し、文字で物の特徴や人の感情を表現する時に、同じ言葉でもフォントが変わると伝わり方が変わるということを伝えました。
次に、ワークショップとして、生徒たちにオリジナルのフォントを作ってもらいました。飲み物を題材にして、ラベルを作成するのですが、何の飲み物なのか手に取った人に伝わるようにフォントをデザインします。あえて色は使わず鉛筆のみを使って、文字の形で伝えることに挑戦してもらいました。
-出張授業を受けた生徒の様子はどうでしたか?
小泉:授業が終わった後も作業を続けている生徒がたくさんいましたね。文字の面白さを感じた1時間でした。
金子:子どもたちのこだわりには驚きましたね。自分が思い描くかっこよさを表現したり、飲み物の特徴を活かした表現を模索したり、みなさん自由に書いてくれました。
碓井:既存の飲み物のラベルをインターネットで調べずに書き始めた生徒の方が、調べた生徒よりも作業の進みが早かったことが興味深かったです。書き始める前に画像を調べてしまうと、既存のイメージに引っ張られて新たなフォントを想起しづらくなるようでした。
細目:絵を描くことにも選択肢があるということですよね。デジタル機器を活用した方が作業効率の良い子もいれば、使わない方が独創的なものを生み出せる子もいる。学校では一人一台タブレットが支給されているので、創作の過程にも多様性があることが現在の教育環境であり、子どもの個性を発揮するポテンシャルを引き上げていると感じます。
出張授業を通じて得られた「じぶんフォント」の教育現場への導入の可能性
-出張授業を通じて得られた気づきはありますか。
小泉:大人が社会課題にチャレンジして世の中にない価値を生み出そうとしている姿に、子どもたちが好奇心を持ってくれたことが印象的でした。出張授業としても良いロールモデルになったと思います。
今回の出張授業を通して、民間企業が持つ社会課題解決への熱量や行動力を実感しました。大人たちが真剣に物事に向き合う姿を通して、挑戦する価値や最新の技術を知り、子どもたちが未来を考えるきっかけになればと思います。
細目:サービスを生み出す側からすると、作ったものが良いか悪いかを判断しがちですが、子どもたちが何かを作り出すこと自体に目を向けてくれているとしたら、とても嬉しいです。
碓井:事業視点で話をすると、現場へのアプローチについて学びがありましたね。出張授業の実現に向けて、まずは区議会議員やPTAへアプローチをしました。ただ、なかなか実証実験に進むことができなかった。そこで、教育現場に直接アプローチしてみようと、民間のイベントスペースでフォントの授業を提案しました。すぐに開催をすることができて、参加者の募集もあっという間に定員である30名の枠が埋まりました。
また、まなびぱれっとが主催した教員向けのワークショップに参加した際にも、教員の方たちが興味を示してくれて、「学芸会の台本でフォントを変えてみると面白いかも」「国語の授業で導入すれば音読のしやすさが変わるかもしれない」と盛り上がり、今回の出張授業に繋がりました。子どもたちと直接触れ合う教育現場の方たちにフォントの持つ可能性を伝えることで、実証実験へのステップに進みました。サービスを開発する際には利用してくださる方への地道なアプローチがとても重要だと気づきましたね。
-出張授業を通して「じぶんフォント」の教育現場への導入の可能性は感じましたか。
金子:授業の最後に生徒に「じぶんフォント」や教科書で使われる教科書体などの8つのフォントを比較して、どのフォントが読みやすいか選択してもらいました。(8つのフォント:「じぶんフォントKDまるご」「じぶんフォントKDはっきりまるご」「じぶんフォントKDどっしりまるご」「じぶんフォントKDすっきりまるご」「E教科書体」「F角ゴシック体」「G丸ゴシック体」「H角ゴシック体」)文字の読みやすさは人それぞれで、それが個性であることを伝えました。また、読み書きが苦手な生徒が「じぶんフォント」を選ぶケースが多いというデータも得られ、「じぶんフォント」の可能性を感じましたね。
図1 図2引用:朱心茹・金子真由美「個別最適な読字体験を目指す『じぶんフォント』プロジェクト:社会基盤としての書体の実践と研究の中で」『日本印刷学会誌』vol. 60, no. 6, 2023, p. 337–344.
碓井:今回、一学年全体でアンケートを実施できたことで、評価できるエビデンスを得ることができました。
小泉:「じぶんフォント」が教育現場で導入されることで、子どもたちの「読むこと」がアップデートされるのではないでしょうか。フォントを選べるということ自体が、社会の普通であり学校の普通にシフトしていきたいですよね。
「じぶんフォント」の今後の展望について
-今回の出張授業を振り返り、今後の展望をお聞かせください。
金子:最終目標は「子どもたちが学校のタブレットでフォントを選び、誰もが等しく教育を受けることができる未来」。ここで満足せずに次のステップに進みたいですね。現在の目標は「じぶんフォント」をデバイスに導入していただくことなので、メーカーへの認知を広げていきたいです。また、東京以外の地方の学校や自治体に向けても「じぶんフォント」が教育現場で教員や生徒たちから求められていることを伝えていきたいですね。今後も出張授業や教員向けのセミナーを開催していきたいです。
小泉:教員の私たちだからこそ民間企業に届けられる言葉があると思います。「じぶんフォント」は社会的意義が高い事業だと出張授業を通して感じました。子どもたちに利用してもらう価値を教育関係者に理解いただけるようにアプローチするお手伝いをしていきたいですね。色鉛筆の色を選ぶように、多様なフォントから自分が読みやすいフォントを選べるようになればいいなと思います。
細目:DNPとの共創をきっかけに、小泉さんやPTA、民間企業など、教育業界への課題解決に取り組みたい方たちにたくさん出会うことができました。「じぶんフォント」以外でもそういった人たちを巻き込みながら教育業界に向けて新たな事業を生み出したいです。さきほど小泉さんがおっしゃっていたように、大人たちが社会のために活動している姿を子どもたちに見せていきたいですね。
今回の出張授業で子どもたちのリアルな声や反応を得ることができ、「じぶんフォント」の教育現場への導入の必要性と未来の可能性をさらに感じることができました。DNP INNOVATON PORTでは「じぶんフォント」の活動を通して、子どもたちにとって平等な教育機会の提供ができる未来を作る過程を今後も発信してまいります。「じぶんフォント」の事業における共創の可能性がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
ユニバーサルコミュニケーション/じぶんフォントの関連記事はコチラ
【共創事例】秀英体の伝統を革新へ、多様な読み書きを支える「じぶんフォント」とは
【D&I推進に活用】多様な文字の見え方を支える「じぶんフォント」の共創パートナー募集!
ディスレクシアを始めとする“読み書き困難”の症状をご存知でしょうか?
ディスレクシアとは、知的能力に関係なく文字を読むことが困難な学習障がいであり、「文字が躍る・動く・ねじれるように感じてしまい、どこにどの文字があるか分からない」「文字や単語の間が広い場合は読めるが、字間が狭いと誤りが増える」など、人によって症状はさまざまです。
DNPは、国立大学法人東京工業大学の朱助教によるディスレクシアの研究をもとに、Webアクセシビリティ技術を有するファシリティジャポン株式会社、フォント開発やWebフォントの配信技術を有する株式会社リアルタイプと連携し、文字の読み書きに困難がある人にも見やすく読みやすい「じぶんフォント」のプロトタイプを開発しました。
日本では学齢期児童の約8%が、文字の読み書きに困難があると言われています。しかし、本人の「見え方」「感じ方」に現れる症状のため、周りからは気付かれにくくケアが遅れてしまうのが現状です。「じぶんフォント」をあらゆるパートナーとの連携で社会実装することで、文字の読み書きに苦手意識を持っている人や、症状がきっかけで読み書きから離れてしまっている人が抱える潜在的な課題を解決していきたいと考えています。
このプロジェクトはこんな方におすすめ
- D&I推進の取り組みの一環として「文字の読み書き困難」の課題解決に取り組みたい企業、自治体、団体等
- ディスレクシアを始めとする文字の読み書き困難課題の啓蒙活動で協業したい企業、自治体、団体等
- 「じぶんフォント」を自社のサイトやツールに導入したい企業、自治体等
1.「じぶんフォント」が解決する社会課題
ディスレクシアの人にとっては、フォントの変更が読みにくさの軽減に役立つ場合があることが知られており、欧米ではディスレクシア対応フォントに関する研究や実用化が進んでいます。国内でも東京工業大学の朱助教によるディスレクシア対応の日本語フォントの試作・評価が進んでおり、その有用性が確認されています。一方、日本語の情報処理で少なくとも必要とされる約7,000字(JIS第1・第2水準)のフォントの開発には、高い負荷がかかっていました。こうした課題の解決に向けてDNPは、これまでのフォント開発のノウハウを活かして、自社フォントである秀英体(秀英体丸ゴシック)を使った3種類のフォントを開発しました。
「じぶんフォント」は朱教授の研究で判明した、読み書きに困難がある人に好まれる形状の特徴をベースに開発しています。画線がシンプルで、先端や角が丸い「秀英丸ゴシック」をベースに、ひら仮名は形状や大きさを整え過ぎないようにしており、例えば「い」は平たく、「く」は縦に長くなど、手書きの形状に近いデザインで、字間にゆとりがあるのが特徴です。
2.「じぶんフォント」プロジェクトの展望
DNPでは「じぶんフォント」に限らず、障がい、世代、国籍を問わずあらゆる人が同じように対話や情報授受できる社会を目指したユニバーサルコミュニケーションサービスを開発・展開することでD&I推進に寄与することに取り組んでいます。
現在は一般への「じぶんフォント」の提供や販売は行っておりませんが、これからさらに研究や開発を重ねて、どなたでもこのフォントをご利用いただけるようにプロジェクトを発展させていく予定です。世の中であたりまえに「じぶんフォント」が使えるようになることを目指して、下記活動を行っていきます。
フォントの社会実装
企業や自治体のホームページ、オフィスコミュニケーションツール、教育ツール等に「じぶんフォント」を導入いただき、アクセシビリティの向上を目指します。
より読みやすいフォントの種類の開発
初期プロトタイプのアンケート結果からさらに研究を重ねて、より読みやすいフォントの開発を進めていきます。
「じぶんフォント」やディスレクシアについての認知拡大
ディスレクシアを始めとする文字の読み書き困難は、本人が自覚したり周りが気付いてあげられることも少なく、世の中の認知度は低い状況です。まずはこのような潜在的な課題を抱えている人がいることをより多くの人に知ってもらい、その課題を解決する一助となる「じぶんフォント」の存在をより広めていきたいです。
上記活動を推進するためにも、さまざまな領域の共創パートナーを求めています。
★このような活動を取り入れたい、共に取り組みたいとお考えの企業、自治体、支援団体の方はぜひコチラからお問合せください。
3.「じぶんフォント」を活用した共創イメージ
お問合せを頂いた企業様とは下記のような形で共創検討を進めさせて頂ければと考えております。
- 「じぶんフォント」の導入による実証実験(サイト、ツール、サイネージ等)
- 「文字の読み書き困難」の課題解決に取り組む協業検討
- 「じぶんフォント」およびディスレクシアに関する啓蒙活動での共創検討
4.お申し込みの流れ
STEP1
問い合わせフォームからご連絡ください。
STEP2
DNPから1週間以内にご返信させていただきます。
その際、MTGの申込設定などご相談させていただく場合もございます。
STEP3
ご面会or資料送付
★お問合せフォームはコチラです
【PJニュース】じぶんフォントを渋谷区のホームページにテスト導入しました
大日本印刷株式会社(DNP)が、国立大学法人東京工業大学、ファシリティジャポン株式会社、株式会社リアルタイプと連携し開発した、文字の読み書きに困難がある人(ディスレクシアを含む)にも見やすく読みやすい「じぶんフォント」が、渋谷区のホームページにテスト導入されました。
テスト導入期間
2022年12月20日~2023年3月31日(予告なく、変更される場合があります)
詳しくは以下のURLをご参照ください(2022年12月20日 秀英体サイトより)
じぶんフォントを渋谷区のホームページにテスト導入しました。|秀英体|DNP 大日本印刷株式会社
「じぶんフォント」の開発ストーリーは以下のURLをご残照ください
【共創事例】秀英体の伝統を革新へ、多様な読み書きを支える「じぶんフォント」とは | DNP INNOVATION PORT-大日本印刷株式会社 (dnp-innovationport.com)
【共創事例】秀英体の伝統を革新へ、多様な読み書きを支える「じぶんフォント」とは
DNPは、発達性ディスレクシアを含む文字の読み書きに困難がある人が見やすく読みやすい「じぶんフォント」の開発プロジェクトを統轄しており、2022年9月には一人ひとりが自分に合ったフォントの読字体験ができるWebサイトを公開しました。今回はプロジェクトの背景や新しい文字コミュニケーションについて、多様な特性を持つ読者にとって読みやすい書体の研究を行う東京工業大学の朱(しゅ)助教と、プロジェクトをリードするDNPの担当者金子氏にお話を伺いました。
【この記事はこんな課題意識を持った新規事業開発担当者におすすめ!】
- 身近な社会課題解決のために事業を立ち上げたい
- 大学の研究と組んだ事業化を目指したい
- 自社のアセットや強みを活用した共創を興したい
(左:東京工業大学 環境・社会理工学院 朱心茹助教、右:DNP ABセンター ICT開発ユニット秀英体事業開発部 金子真由美氏、「市谷の杜 本と活字館」にて)
朱助教の想いとDNPの伝統から生まれた「じぶんフォント」
ー DNPの「秀英体」を用いた事業開発について教えてください。
金子:私が所属するICT開発ユニットではユーザーに価値のある製品やサービスの開発・実証実験を行っており、その中でDNPのオリジナル書体である「秀英体」を使ったサービス開発に取り組むのが秀英体事業開発部です。
DNPの前身である秀英舎では、活版印刷技術を用いて人々の知識や文化の向上に貢献することを謳っており、活版印刷の書体として誕生した秀英体は100年以上にわたって開発され続けています。現在も私たちの身の周りで多く使われている秀英体ですが、辞書や文庫の印刷物だけでなく、CMなどの映像や電子書籍などでの利用へと広がっています。
生活者がWebやSNSで情報発信するなど表現が多様化する今、文字コミュニケーションの新しい価値を作り出したいと考え、私たちは「人に想いを伝える」ツールとしてフォントの開発をしています。その中で朱さんとの出会いをきっかけに始まったのが、文字の読み書きに困難がある人に読みやすいフォントを開発する「じぶんフォント」プロジェクトでした。
(写真:「市谷の杜 本と活字館」展示品)
ー朱助教との出会いと、「じぶんフォント」プロジェクトの立ち上げについてお聞かせください。
朱:現在私は東京工業大学 環境・社会理工学院 野原研究室で、多様な特性を持つ読者にとって読みやすい書体の研究をしていますが、DNPさんとの出会いは東京大学大学院にいた時に遡ります。2016年に「ディスレクシアに特化した和文書体と書体カスタマイズシステムの研究」というテーマでDNP文化振興財団の研究助成を頂いたことを機に、DNPの方々が私の研究に興味を持ってくださり、研究室に足を運んでいただくなどをして交流が始まりました。
そこから4年が経ち、ある程度成果も見えてきたタイミングで、DNPさんが事業化のプランを検討くださったことが本プロジェクトの発端です。
金子:前任の担当者が、伝統ある秀英体をより多くの人の役に立てるように領域を広げたいと考えていた時、朱さんの研究に出会い興味を持ち、研究室に話を聞きに行くことを毎回楽しみにしていたと聞いています。私は2020年に現部署に異動し、プロジェクト立ち上げに関わるようになりました。
ただフォントを開発するだけではオーディエンスが限られるため、より多くの人の役に立つようにアクセシビリティ領域の技術を組み込んで事業化を始めたらどうかという話から始まり、ウェブサイトの表示をユーザー毎にパーソナライズできるアクセシビリティソリューションを提供しているファシリティ本社のマネージングディレクター イヴさんとお話しする機会を設けたんです。
ディスレクシアに向けたフォントが日本にまだないのであれば、研究に留まらず早く世の中に出して、実証実験をしながらブラッシュアップすべきとアドバイスをいただき、実際にはファシリティのサービスに開発したフォントを組み込んで世の中に出したらいいと背中を押していただきました。それをきっかけに大きく一歩進むことができて、DNPと朱さん、ファシリティジャポン、フォント開発・制作を行うリアルタイプの4社で「じぶんフォント」プロジェクトを立ち上げようとなったのが2021年の頭でした。
ー朱助教はどのような背景から、発達性ディスレクシアを持つ人にとって読みやすい書体に関する研究に携わっているのでしょうか?
朱:自分が人と話すことが得意ではなかったからか、話し言葉よりも書き言葉や文字の形に興味がありました。大学のサークルでポスターを制作したときに意識的にフォントを選んだことをきっかけに、フォントについて考えるようになりました。金子さんが「フォントは想いを伝えるツール」とおっしゃっていましたが、まさに言葉には含まれてない情報として、フォント自体が読み手に気持ちを伝えたり印象を与えていることに気が付いたんです。
私たちが日々無意識にフォントを通じて文字を読み書きする中では、言葉に含まれない情報についてはなかなか言語化されず、共有することが難しくもあります。そこで、フォントのデザインはもちろん、フォントが意味とどう関連するのかを研究したいと思い、来日して東京大学の図書館情報学研究室に入りました。
初めてディスレクシアや読み書き困難について知ったのは、特別支援教育に関する講義を受けた時でした。欧米ではディスレクシアの方にとって読みやすいフォントが作られ、一定の成果も出ていますが、日本語ではディスレクシアに特化したフォントがないこともわかりました。人々の課題を解決できるかもしれないフォントは社会的な意義があると思い、ディスレクシア支援を行うNPO法人(NPO EDGE)も訪問して実際の状況をお聞きしたのちに、本格的に研究を始めるに至りました。
デジタル社会だからこそシームレスにフォントを選べる仕組みをつくりたい
ー実際に「じぶんフォント」を開発した流れをお聞かせください。
金子:まずはどのようにフォントを開発するかを考えました。通常は、日本語の書体は7000文字が揃っていないと使えず、一書体を作るには1、2年を要します。ですが今回は、一文字ずつフォントを作るのではなく、DNPが持つ秀英体フォントの骨格をもとに太さや大きさなどを変形させることで新たなフォントを作ることに挑戦しました。結果として3書体を5カ月で作ることができました。
朱:研究の中で、読み書き困難の症状は人によってさまざまで、読みやすい書体も異なることがわかってきました。ですので、決め打ちでフォントを提供するのではなく、ユーザーが自分にとって読みやすい書体を自分で簡単に作れるカスタマイズシステムの提供を最終的には目指しています。プロジェクトの立ち上げ時にはシステムのプロトタイプができていたので、それを元に本格的にカスタマイズシステムを作るところから始めました。
普段フォントを選ぶ時には「細・中・太」などきまった選択肢を使いますが、このシステムを使うと文字の縦横比や行間、字幅、太さなどを読み手に合わせて変形させたフォントを作ることができます。デジタル社会だからこそシームレスに、一人一人に合わせたフォントを作成できるカスタマイズシステムを開発することを目指しています。このシステムを用いて「じぶんフォント」の開発に取り組んでいます。
これまでの研究では、システムのプロトタイプを用いて、実際に9名の読み書き困難を持つ方に、文字の太さ・高さ・大きさ・線幅の太さの差などを調整していただき、自分が読みやすいフォントの形を3パターンずつ作っていただきました。また、関連した研究でDNPの「秀英丸ゴシック」がディスレクシアの方にとって読みやすい可能性があることも分かり、計27パターンから得られた数値の組み合わせを秀英丸ゴシックの骨格に当てはめて、今回「じぶんフォント」のWebサイトに実装した3種類のフォントが出来上がりました。
金子:3つのフォントをディスレクシアの方に見てもらうと、「どっしりまるご」が良い、「はっきりまるご」が良いなどとそれぞれ異なる意見を出してくださり、一般の方にとってはフォントの形が少しの差でも、ディスレクシアの皆さんにとっては見え方が大きく違うんだなと感じます。
朱:既存フォントの見え方もディスレクシアの方によってさまざまです。視覚的な症状がない方も多いですが、「明朝体は先端が目に刺さって痛い」、「ゴシック体は図形に見える」など視覚的に読むことが困難という声も多くあります。ディスレクシアの症状自体は視覚とは関係なく、文字を音にうまく変換できないために読むことが難しくなると言われていますが、幼少期につまずくと読みの発達が遅れてしまい、大人になっても自然に読むことが難しくなったり、読むことはできても非常に疲れてしまったりとさまざまなところに影響が出てきます。「じぶんフォント」を使うことで読むのが楽だとか、少なくとも読むのがそこまで嫌じゃないという状態が達成できれば、まずは成功だと考えています。
ープロジェクトを進める中で、特にこだわったポイントはありますか?
朱:9月に公開した「じぶんフォント」のWebサイト自体を調査・実験の場として、データをとれる仕組みをしっかりと設計してあることが私のこだわりです。サイト上は“体験”という形になっており、属性などの基本情報、読書量、読む時や書く時にどのような困難があるかなどを答えていただき、物語を読み進める形で読みやすいフォントを選んでいくと自分に合ったフォントが表示される設計です。この一連の流れの中で質問表調査と一対比較の実験を行っており、最終的に大規模かつ良質なデータを取れるような仕組みを作っています。調査・実験の設計にあたってはプロジェクトメンバーだけでなく、外部の専門家にもご意見いただきました。
ここで集めたデータを分析して、どんな読み書き困難の症状があった時にはどんなフォントの特徴がよさそうか、それはなぜなのかを、実態を確かめ解釈していく作業をしっかり行いながら、今後の研究と実用化に向かっていきたいと思っています。
金子:このプロジェクトが今日まで上手くやってこれているのは、朱さんという存在があり、その研究に基づいてるからだと感じています。朱さんの研究を進めるためにみんなが集まって、みんながこのフォントが世の中に広まったらいいなと思っている。朱さんの考えが軸にあることで、プロジェクトのぶれない芯になっているんです。
「じぶんフォント」という名前はプロジェクト立ち上げ当初に話し合って決めました。私たちの方向性を示す名前にしよう、どんな未来を想像して名前をつけようと話す中で、ディスレクシアは大人になっても続くけど、最初に読み書きにつまずく子どもの頃が重要なのではという意見がありました。
読めないことで授業についていけず学校が嫌になったり、不登校になったりすることがないように、早いうちに自分が読みやすいフォントに出会える世の中になればいいねという想いから、子どもにも受け入れられるようなやわらかい名前にしようと何十案も出し合って、朱さんの案である「じぶんフォント」に決めました。私たちの想いが込もったこの名前が、私の中での大きなこだわりです。
一人一人の多様な読み書きを支える「じぶんフォント」へ
ー「じぶんフォント」をリリースしてから今日までの成果や、今後目指す共創について教えてください。
金子:「じぶんフォント」の一般提供に向けてより多くの方に実証をとり、評価を受けていく必要があります。9月に公開した公式サイトもその手段の一つですが、一ヶ月で約1万人の方に閲覧され、5000件のアンケート回答が集まりました。ファシリティ社のアクセシビリティ機能の中に「じぶんフォント」を入れて、自治体のWebサイトなどで実験的に活用いただけるように準備しています。
今後は、特に読み書き困難を抱える子どもたちの学習環境を良くする必要があると考えていますが、現状では子どもたちの評価を多くはとれていません。小学生、中学生の方に使ってもらうきっかけを増やすため、そういったコミュニティと繋がることができたり、教育デバイス内で「じぶんフォント」を使えるようにする取り組みを一緒にできる共創パートナーとの出会いがあれば嬉しいですね。
ー「じぶんフォント」をはじめ、DNPがユニバーサル社会の実現に向けた文字コミュニケーションを普及させていく展望をお聞かせください。
金子:今までは「みんなにとって読みやすい文字」が良いものとされてきたかもしれませんが、これからは多様な一人一人に目を向けて、それぞれが暮らしやすくなるような世の中にしたいと思っています。その中で「じぶんフォント」が今困っている一人一人の手助けとなる存在になると信じています。
DNPだからこそ、いろいろな企業との繋がりを活かして文字コミュニケーションのフィールドを広く整えられると思っているので、ただ書体を開発するだけで終わらせず、それを世の中に普及させていくための繋がりをどんどん作り、いろんなツールでいろんな人が「じぶんフォント」を使えるようにしていきたいです。
朱:社会基盤としての文字に携わっていける体力もそうですが、既存の文字の形にとらわれず、よりオープンな形を模索していくところにDNPさんの強さがあると感じています。100年以上続く秀英体という資産が「じぶんフォント」のように形を変えることを良しとしたり、それが本当に社会のためになるのならばというオープンな姿勢が今回のプロジェクトの根幹にあります。歴史と未来のビジョンが共存しているDNPさんと一緒に取り組めるからこそ、このプロジェクトでも長いスパンの展望を持てていると感じます。今回のプロジェクトはとくに文字に着目していますが、この取り組みを通して、多様な人々とその多様さに対応した仕組みや制度があたりまえにあるようなユニバーサル社会の実現に貢献できたら嬉しいです。
このプロジェクトにご興味のある方や、共創検討をしたい方はぜひコチラからお気軽にお問合せください!
文字の読み書きに困難がある人に見やすく読みやすい「じぶんフォント」を開発
「じぶんフォント」の読字体験ができるWebサイトを公開、さらなる改善や社会実装を目指す
大日本印刷株式会社(DNP)は、国立大学法人東京工業大学、ファシリティジャポン株式会社、株式会社リアルタイプと連携し、文字の読み書きに困難がある人(ディスレクシアを含む)にも見やすく読みやすい「じぶんフォント」のプロトタイプを開発しました。このフォントは、東京工業大学の朱心茹(しゅ しんじょ)助教の「発達性ディスレクシアに特化した和文書体の研究」の結果をもとに、DNPのオリジナル書体である秀英体の「秀英丸ゴシック」をベースに開発しました。
詳しくは以下のURLをご参照ください(2022年9月26日 DNPニュースより)
教育現場への導入を目指して。読み書きが困難な子どもへ「じぶんフォント」を届ける共創プロジェクト
DNPは発達性ディスレクシアを含む文字の読み書きに困難がある人が見やすく読みやすい「じぶんフォント」の開発プロジェクトを統轄しており、現在は教育領域への導入に向けて子どもの読み書きに関する実証実験の準備をしています。
今回はDNPの「じぶんフォント」プロジェクトマネージャー 金子真由美氏と、実証実験の共創パートナー・渋谷ブレンド代表取締役社長の細目圭佑氏に共創についてお話をお伺いしました。
【この記事はこんな方におすすめ】
①平等な教育機会の提供を実現したい自治体・企業
②読み書きに関わるコミュニケーションに関心のある自治体・企業
③大企業とスタートアップ企業の共創事例に興味がある方
教育現場への「じぶんフォント」導入に向けたDNPの思い
-「じぶんフォント」開発の背景と、DNPの役割を教えてください。
金子:プロジェクトの始まりは、発達性ディスレクシア※を持つ読者にとって読みやすい書体に関する研究に取り組んでいる東京工業大学の朱心茹(しゅしんじょ)助教との出会いです。個々人の読み書き特性に対応できる日本語フォントが、まだないことに課題を感じ、DNPのオリジナル書体「秀英体」をベースに、読みにくさを感じているすべての方に向けた「じぶんフォント」を開発することを決めました。DNPはプロジェクトの統括として、開発と実用化の役割を担っています。
※発達性ディスレクシアは、知的能力や教育環境に問題がないにも関わらず文字を読むことが困難(文字を読むのが遅い、読み間違いが多いなど)な学習障がいです。二次的に、学業不振や学校不適応等が生じる可能性があると知られています。
-DNPのオリジナル書体「秀英体」は100年以上の歴史があります。現在もフォントを開発している理由を教えてください。
金子:DNPは印刷事業から始まった会社で、創業当時にオリジナル書体として「秀英体」が誕生しました。実は「秀英体」は誕生してからずっとアップデートし続けており、「人に思いを伝えるツール」として、美しく読みやすい文字を追求しています。フォントは、世代や国籍、障がいを超えたコミュニケーションツールになりうるのではと考え、ユニバーサルコミュニケーション(UC)に力を入れています。
-金子さんご自身は「じぶんフォント」に対してどのような思いを抱いていますか。
金子:実は東京パラリンピックのボランティアの経験で、障がいを持つ選手たちとの触れ合いを通して、自分も何か役に立ちたいという思いが強くなりました。また、身近におそらくディスレクシアが原因で不登校になってしまったお子さんがいて、私になにかできることはないかと考えるようになりました。読むことに苦しんでいた方たちが、少しでも明るく人生を過ごせるようにと思いながらプロジェクトに取り組んでいます。
-教育現場への導入を目指す理由を教えてください。
金子:読み書き困難が理由で授業についていけず、学校という場所を嫌いになるとか、学習意欲がそがれてしまう、など勉強から離れていってしまう可能性があります。
現在、普及が始まっているデジタル教材であれば、「音声読み上げ」という選択肢もありますが、自分に合ったフォントに切り替えることが出来れば、「じぶんフォント」が多様な学びに対応する学習環境整備を考えるきっかけになるのではないかと考えました。
思いを受け取り、実行するCOO的存在「渋谷ブレンド」との共創
【渋谷ブレンド株式会社】
大手企業様のアイデアや構想に対して事業化推進をするために、渋谷区との官民連携プロジェクトから法人化。カーボンニュートラルやWEB3.0領域を得意とする。事業開発の受託のみならず、日本カーボンクレジット取引所をローンチするなど自社スタートアップにも取り組む。
-大手企業や行政と共創事業に取り組む渋谷ブレンドの具体的な事業内容を教えてください。
細目:渋谷ブレンドは大手企業や自治体との事業開発を専門とする組織です。オープンイノベーションの必要性が日本中で叫ばれて久しいですが、新しい価値を生み出していくことは容易ではありません
渋谷ブレンドは、行政だけでは解決できないような課題に対して民間主体での戦略的エリアマネジメントを仕掛けさせていただき、行政と企業間でスムーズに事業が進むようにサポートしています。これにより、社会課題の解決のみならず大手企業の新規事業として発展させていくことを目指しています。
-渋谷ブレンドは事業を通してどのようなことを目指していますか。
細目:大手企業のビジョンや戦略を絵に描いた餅にせず、本質的に社会実装していく状態をつくりたいです。ビジョンはとても素晴らしい大手企業でも様々な制約で新規事業に対するリスクが取れず、スムーズに動かない場面を多く見てきました。我々はそういった大手企業の事業開発を外部COO組織として支援させていただいております。DNPのような日本の社会に対するインパクトがある企業との共創により、一緒に未来を作っていくことができると信じています。
-DNPと渋谷ブレンドの共創のきっかけを教えてください。
金子:「じぶんフォント」の公式サイトで、それぞれの人に合ったフォントを見つけるアンケートを実施しました。文字の読み書きに困っているであろう子どもの声を拾いたいと考えていましたが、回答者5,000人のうち子どもは20人ほど。民間企業が小学校へ直接アンケートをお願いすることも難しく、悩んでいた際に官民連携や大手企業のプロジェクト推進をしている渋谷ブレンドのお力をお借りすることにしました。
細目:そのようなご相談を受け、渋谷ブレンドでは「じぶんフォント」を教育現場で導入していただくために、教育ステークホルダーにお声がけさせていただきながら執行チームを組成いたしました。
一般的に民間がすぐに教育現場へ直接入ることは難しいですが、今回のような教育現場目線のプロジェクトが、新規事業の実証実験にもなり、教育課題も解決していく兆しとなることは大変興味深いです。
金子:渋谷ブレンドとの共創によって、自分たちでは思い至らなかった方法で教育現場にアプローチすることができて良かったです。
細目:今回の共創はDNPをCEOとしたら、渋谷ブレンドはCOOです。「じぶんフォント」プロジェクトのビジョンと戦略をDNPが考え、渋谷ブレンドがDNPの思いを受け取り執行部隊として動いています。それぞれの役割が明確なので、とても良い関係性でプロジェクトを進めることができています。
子どもたちのリアルな声を集めて実証実験の信頼性を上げ、教育機関やデバイスメーカー企業に提案していきたい
-子どもたちに向けた実証実験の目的と期待する成果を教えてください。
金子:読み書き困難が原因で授業についていくことができない子どもに対して、教育現場が読み書き困難であると判断できない、もしくは対応策を持ち合わせていないために対応が難しいのではないか?という仮説を持っています。
読み書きに困難を抱えていることに教師や親御さんが気付いた際には、「じぶんフォント」を利用し、読み書き困難を少しでも軽減・解消することで、授業に改めて前向きに取り組める環境づくりにお役立ていただきたいです。もし、「じぶんフォント」によってディスレクシアの子どもが本を読めるようになり、自己肯定感を上げることができたら、その体験を分析して、国や教育機関に“誰一人取り残さない教育の実現に向けた施策”として提案していきたいと思っています。
金子:同時に、デバイスメーカー企業に向けてもアプローチをしたいですね。実証実験を通して「じぶんフォント」の必要性を感じていただき、教育現場で子どもが使うタブレットへの導入を進めたいです。
-実証実験はどのように進んでいますか?
細目:現在は子どもたちに向けた実証実験の開催ができる道筋が見えた段階です。我々の本当の目的はディスレクシアの子どもたちの学習促進ですが、学校側からすると「営利目的なのでは」と誤解されてしまう可能性もあります。教育現場のステークホルダーの皆様と子どもたちのためになるように協議を重ねながら、学校側にも納得いただける意味のある施策を実施できるよう準備を進めています。まずは、従来の授業の形式にとらわれず文字に触れる機会を作り、子どもたちの声を拾っていくことを目指しています。
金子:現在想定している施策の内容としては、フォントの役割について理解を深めてもらい、興味を持ってもらえるよう授業を行い、子どもたちがそれぞれの読みやすいフォントを探すというイベントにしようと考えています。
細目:フォントには、「おいしそう」「暑そう」などの感情を伝えることができたり、的確な情報を伝える、文字や文章の読みやすさを変えることなど、さまざまな機能があります。たくさんあるフォントを比べることで、「読みやすさとはなんだろう」と子どもたちが考える機会になればと思っています。
我々が大切にしているのは、勉強が苦手になってしまう「きっかけ」を逃さないようにすること。その原因が読み書き困難の場合には、フォントを一つの解決策としてご提案したいですね。
-実証実験ではどのような目標を持っていますか。
細目:実証実験では、子どもたちに文字の読みやすさを考えるきっかけを提供するところから始めます。その中で、子どもたちのより多くのリアルな声を集め、タブレットメーカーの共感を得て「じぶんフォント」導入を促していければいいなと思っています。
金子:今回の実証実験は渋谷など、東京の近いエリアの小学生に向けての取り組みですが、全国の地域に展開していきたいと思っています。
今後の実証実験に向けて求めるパートナー像とは
金子:学習障がいの課題を全国で解決していくために、地方の教育現場と繋げていただける企業を求めています。また、教育用デバイスや教育サービスを提供している企業、を提供している企業とも連携していきたいです。
渋谷ブレンドと共創して、お互いに深くコミュニケーションを取り、自分たちに不足していたノウハウを補完いただくことで、事業の展開が深く広くなっていくことを実感しました。「じぶんフォント」への思いを共有して、一緒に取り組むことができる企業とさらに繋がることができたら嬉しいです。
平等な教育機会の提供の実現を目指す、自治体・企業の方はぜひお問い合わせください。
GIGAスクール構想が進むことで、1人1台の端末による学習があたりまえになることで、じぶんが一番効果的に学習に取り組めるフォントに調整することもあたりまえになるかもしれません。
本記事をお読みいただき、じぶんフォントについて興味をお持ちいただいた方、活用を検討してみたいので情報が欲しいという方はコチラからお問合せください。
【当プロジェクトに関連する記事】
【共創事例】秀英体の伝統を革新へ、多様な読み書きを支える「じぶんフォント」とは
【PJニュース】じぶんフォントを渋谷区のホームページにテスト導入しました
【D&I推進に活用】多様な文字の見え方を支える「じぶんフォント」の共創パートナー募集!
海洋プラスチックや地球温暖化などの環境問題の解決のため、使用済みプラスチックをリサイクルし、資源を循環させていくことが求められています。DNPでは容器包装からの再生プラスチックを題材に、様々な分野のデザイナーの方々と一緒に再生材の新しい活用方法を生み出す「 Recycling Meets Design🄬 Project 」を推進しています。
DNPは独自の「P&I(Printing&Information)」の強みと、パートナーの強みを掛け合わせることで提供できる「高精細な表現技術」と「大量の情報処理能力」を活かして、あらゆる制限を超えてリアルとバーチャルをつなぎ新しい体験価値を創出する「XRコミュニケーション事業」を展開しています。DNPが提供する安心・安全なXR空間で、表現の拡張や良質なコンテンツ発信による新しい文化価値の創造や、新しいコミュニケーションや経済活動の創出を目指します。