未来創造ラボが切りひらく、XRでつながる未来の可能性
- メタバース空間を使ったコラボレーションに興味・関心のある方
- メタバース空間を使った実証や事業を検討されている方
- リアルとバーチャルの連動に興味・関心のある方
- DNPのXRコミュニケーション事業に興味・関心のある方
DNP INNOVATION PORT運営の小泉です。
XR(拡張現実)を活用し新しい体験と経済圏を創出する「XRコミュニケーション事業」を推進する、未来創造ラボ。
2024年10月から11月に開催されたソーシャル&カルチャーデザインの祭典「SOCIAL INNOVATION WEEK 2024(以下、SIW)」(主催:一般社団法人渋谷未来デザイン、以下、渋谷未来デザイン)では、未来創造ラボが協賛し、学術研究をエンターテインメント作品として楽しむ実験プロジェクト「Academimic(アカデミミック)」と連携。大日本印刷(以下、DNP)と渋谷未来デザインで提供している「バーチャル宮下公園」にて、リアルとバーチャルを連動させたアート鑑賞体験を創り出しました。
リアルとバーチャルが交差する新たな体験に挑戦した背景や狙いを、関係者3名に聞きました。
一般社団法人渋谷未来デザイン 理事・事務局長
長田新子氏
Academimic 主宰
浅井順也氏
大日本印刷株式会社 コンテンツ・XRコミュニケーション本部
XRコミュニケーション事業開発ユニット 副ユニット長
兼 ABセンター 事業開発ユニット 未来創造ラボ
宮川尚氏
新しい価値を創るために:未来創造ラボの挑戦
Q.未来創造ラボは、どのような背景で立ち上がった組織なのでしょうか。
宮川:
DNPはこれまで、地域創生をテーマにした新規事業創出の活動中で、渋谷未来デザインと連携を深めてきました。これまでにさまざまなアプローチを試しながら、新しい可能性を模索してきましたが、ビジネスを手段に地域課題を解決するには長期的な視点が必要であり、形にすることは簡単ではありませんでした。
その過程で、コロナ禍を経験したことをきっかけに新しい技術領域、特にXRやデジタルアーカイブを活用した事業共創を加速させることになり、2021年に公共公園の可能性を問う実験として「バーチャル宮下公園」を立ち上げました。
こうした流れに平行して、DNPでは2020年よりXRを中心テーマに社内横断の新規事業開発プロジェクトがスタートし、渋谷未来デザインとの共創を基盤に、2021年から事業開発を本格化させています。
現在、未来創造ラボでは、短期的な成果を目指すのではなく、10年、20年先を見据えた長期的な視点でプロジェクトを進めています。その中で、「SFプロトタイピング」や「バックキャスティング」といった手法を活用しています。これらの手法では、遠い未来の理想像を描き、その実現に向けて今何をすべきかを逆算して考えます。
Q.なぜXRに着目したのでしょうか。
宮川:
2021年にXRコミュニケーション事業を本格始動させた当時、「メタバース」という言葉はまだ一般的ではなく、「ミラーワールド」や「デジタルツイン」といった概念で議論されていた時代でした。この状況を見て、90年代のインターネット黎明期との類似性を強く感じました。
インターネットは当初、一部のビジネスで使われるだけの存在でしたが、やがて社会全体に浸透し、私たちの生活そのものを変えました。同じように、XRも単なる技術ではなく、社会そのものを変える「環境」として捉えられるようになると考えています。
こうした考えから、XRやAIを活用した新しい事業環境が整いつつあるタイミングで、DNPとしてもこの分野に本格的に取り組むべきだと判断しました。
リアルとバーチャルの融合:新しいアート鑑賞体験の創造
Q. SIWで実施した、XRでの新たなアート鑑賞体験とはどのようなものだったのでしょうか?
長田:
SIWは、渋谷という街の特性を活かし、街全体を舞台にしたフェスのようなイベントとして進めています。2024年はXRやメタバースといった新しい技術を取り入れながら、公共空間でリアルとバーチャルを融合させたアート体験を提供しました。
具体的には、XR(拡張現実)技術を活用し、リアルな展示とバーチャル空間での体験を組み合わせたプロジェクトを展開しました。バーチャル宮下公園では、メタバース空間ならではのアート作品を鑑賞いただけるよう、Academimicさんと連携し、多様な試みを行いました。このような取り組みを通じて、渋谷のエネルギーや多様性をさらに引き出せたと感じています。
浅井:
私たちAcademimicは、学術研究をエンターテインメントとして展示することをコンセプトにしています。たとえば、タワーレコード前では「ラットがヘドバンをする」というユニークな論文をテーマにした作品の展示を行いました(「BEAT!!!」)。音楽の象徴的な場所とテーマが合致し、訪れる方々がリアルな空間での展示をより深く楽しめるよう工夫しました。
さらに、宮下公園には「ワンちゃんは飼い主と目を合わせると目がうるうるする」という論文を基にした作品を展示しました(「uRuRu」)。この作品は宮下公園にあるハチ公のレプリカと関連付けることで、文脈を持たせた展示になりました。こうした試みが、単なるアート展示にとどまらず、町とアートが調和した新しい鑑賞体験を生み出し、リアルとバーチャルの融合をさらに強化できたと思います。
Q. 来場者からの反響はいかがでしたか?
浅井:
リアルな展示とバーチャル空間での体験を組み合わせたことで、多くの反響をいただきました。特に印象的だったのは、バーチャル空間を先に体験した子どもたちが、実際に宮下公園を訪れた際に「ここがバーチャルで通った道だ!」と大喜びしていた場面です。反対に、バーチャル空間に存在していたものがリアルにはないことに気づいたときのリアクションも大きく、リアルとバーチャルを行き来する中で新たな発見を楽しむ様子が見られました。
また、展示された作品を通じて普段考えないテーマについて議論が広がる場面もありました。たとえば、「素粒子ミューオン」に関する作品では、見えない現象をどう可視化するかというテーマについて参加者同士で自然に会話が生まれていました。このように、リアルとバーチャルの両方を活用することで、体験の深みが増し、来場者の興味を引き出せたと感じています。
宮川
今回のプロジェクトは、XRを活用することでリアルな空間だけでは表現しきれない可能性を引き出すきっかけになりました。また、リアルとバーチャルが相互に補完し合い、町の魅力を新たに引き出す手段としての可能性を示す良い機会でもあったと感じています。XRは、単に技術を見せるだけでなく、リアルとバーチャルの間でどのように新しい価値を生むかを試す場として、非常に意義深いものでした。
渋谷から広がる共創の未来:次なる挑戦への展望
Q. 振り返ってみて、今回のプロジェクトの手応えはいかがでしたか?
長田:
リアルとバーチャルを融合させた今回の取り組みは、次のステップに進む大きなきっかけになったと感じています。特に、XRやメタバースといった技術が、社会課題の解決や街づくりにどのように活かせるか、その具体的な方法が見えてきました。また、渋谷という舞台での成功が、他の地域にも応用可能な仕組みとして広がる手応えを得たのは大きな成果です。
宮川:
このプロジェクトでは、XRやメタバースを単なる技術としてではなく、社会課題の解決や公共空間の新しい活用にどう結びつけるかを重視しました。
私たちは、他にも、不登校児向けのバーチャル空間や、役所業務のメタバース化の社会実装に関わっていますが、これらの取り組みと同様に、技術を活用することで生まれる価値を示せたと感じています。
浅井:
今回の取り組みを通じて、多くの企業や団体から「自分たちもやってみたい」という声をいただきました。単なる展示ではなく、実際に人々が体験に参加できる仕組みを作れたことが、大きな成果だったと思います。次は、地方のランドマークや文化施設でこの経験を活かし、新しい価値を提供していきたいと考えています。
宮川:
今回の取り組みを通じて、Academimicさんが多くの人に知ってもらうきっかけとなったのは非常に嬉しく思います。今後の作品にも大いに期待しています。
また、渋谷未来デザインさんとは引き続き連携を深め、宮下公園に限らず、別の場所や地域でのプロジェクトにも挑戦していきたいです。渋谷で得た成功や知見を他の地域や施設に広げることで、さらなる社会的な価値を生み出せると信じています。
今回の渋谷での取り組みは、新しい町の姿や公共空間の在り方を模索する挑戦の始まりに過ぎません。これからも、多様なパートナーと協力しながら、社会課題の解決につながるプロジェクトを実現し、より多くの人々に価値を届けられるよう挑戦を続けていきたいと思います。
Q. 改めて、DNPがXR事業に取り組む意義を教えてください。
宮川:
「DNP=印刷の会社」というイメージを持つ方が多く、私たちがXRのような新規事業に取り組んでいることに驚かれることもあります。しかし、DNPは長年、印刷をコア事業として、その工程を分解し、新しい形に転用・応用することで、新たな価値を創り出してきました。「画像加工」や「ビジュアル表現」へのこだわりはDNPの技術の中核にあり、XR事業にも深く繋がっています。
こうした背景から、DNPの新規事業は多岐にわたり、その領域はビジュアル表現にまつわるコミュニケーションの領域にも広がっています。たとえば、かつてグラフィックデザイナーが「アーティスト」として認識されていなかった時代に、DNPはその価値を広く伝えるために銀座にギャラリーを設けました。このギャラリーでは、横尾忠則さんや田名網敬一さんといったデザイナーたちの作品を展示し、デザインや印刷物の持つ文化的な価値を発信してきました。こうした活動も、現在のXR事業にも繋がるDNPの強みとなっています。
XRは、印刷技術やデザインの考え方を新しい形で表現する可能性を持つ、最新の技術領域です。今後も、まちづくりや地域創生、さらには社会課題の解決に向けてXRを活用することで、新しい価値を生み出していけると考えています。
また、こうした取り組みを進めるにあたって、フラットで信頼できる関係を築けるパートナーとの共創が欠かせません。これからもXRを通じて、社会に新しい可能性を提案し続けていきたいと思います。
いかがでしたでしょうか?
XRを活用した新たな価値創造に挑むDNPは、リアルとバーチャルが融合する未来を形にしていきます。地域や社会に新たなつながりを生み出すプロジェクトが、どのような可能性を切りひらいていくのか。これからの展開にもぜひご注目ください。
未来創造ラボの取組や、XRと地域の新たなつながり、関係に少しでも興味関心をお持ちいただけましたら、こちらからお問い合わせいただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
■バーチャル宮下公園について
渋谷区立宮下公園 Powered by PARALLEL SITE(パラレルサイト)
DNPは、一般社団法人渋谷未来デザインと宮下公園パートナーズとともに、公共空間の高度利用の取り組みの一つとして、このバーチャル空間を2021年7月に構築しました。現在、3者が連携してさまざまな実証事業を行っています。 リアルとバーチャルの公共空間で多様な取り組みを行うほか、京都市と連携して京都の魅力を体験できる「京都館PLUS X」をバーチャルの宮下公園内で展開しています。今後も、公園の価値向上や新たなコミュニケーションの創出、地域活性化を促し、渋谷の新しいカルチャーを発信していきます。
・渋谷区立宮下公園 Powered by PARALLEL SITE®