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2022.7.08
  • CO-CREATION

【PJ進捗報告】男性育休を取り巻く課題とは?

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こんにちは!本プロジェクト担当の大島です。

前回の記事では、「働く」と「育てる」を両輪で回すことができる社会を目指し、男性育休に着眼した背景などをお伝えしました。

今回は、サービスアイディアを検討する上で私たちが重視した、ステークホルダーへのインタビューの詳細をご紹介します。

 

しくじりから学んだ、あらゆる立場のステークホルダーへのインタビューの重要性

 

新規事業検討において、課題やニーズの把握はとても重要です。これまで私たちが検討してきた様々な新規事業アイデアにおいても、重視して取り組んできたつもりでした。しかし、開発が進むうちにいつのまにか、「本当に困っている人が誰かわからない」「あったらいいけど、ないと困るわけではないと言われる」…といった壁に直面し、ニーズ調査をやり直すケースもありました。

そんな、かつてのしくじりからの学びとして、初期段階で徹底的にこだわったのが、あらゆる立場のステークホルダーへのインタビューだったのです。

<インタビューを実施した対象者と人数>
・社内外の育休取得対象の男性社員(20名) ※以降 当事者
・企業における育休推進担当の人事部門やD&I部門のご担当者(20社)
・当事者をサポートする同僚社員やマネジメント層(11名)※以降 サポーター/上司
・DNP内の関連部門(5部門)
・育児休業やダイバーシティテーマに取り組む有識者の方々(10社)

このような立場の方々に、約2か月で60回以上のインタビューを実施しました。多い時には、週8回の実施という週もありました!

状況のヒアリングだけではなく、私たちの仮説に対する忌憚ないご意見をいただくことや、時には新たな問題提議をいただくこともありました。元々接点のあった企業・部門の方ばかりではないため、インタビューをきっかけに生まれた接点は、私たちのプロジェクトの財産となっています。

 

大切なことはすべてインタビューが教えてくれた…!?

 

最初にインタビューを実施したのは、育休取得対象の男性社員(当事者)と、企業の男性育休推進担当者でした。

DNPの男性育休取得率は年々上昇しており、数週間~数か月という取得期間の方も多くなってきています。私たちが想像していたよりも、DNPでの男性育休には変化が表れていることを実感できたことも、1つの実りでした。

しかし、パートナーの妊娠初期に「3か月取得してみよう!」と意気込んだ方が、最終的には1か月取得になるなど、「取りたい内容と、取れた結果の乖離」が発生するケースが多いという現実にも直面しました。所属するチームの上司や同僚など、周囲へ迷惑をかけてしまうという意識や、「自分の居場所がなくなってしまう」という不安から、期間を見直したといった内容は、とてもリアリティがあり、強く印象に残っている当事者の声です。

一方、お会いした企業の方々は、皆さん社員を大事にされていて、「社員が取りたい内容で取れるように」と、取得促進に励まれていました。特に、マネジメント層への教育を実施される企業はとても多く、当事者に対してだけでなく、周囲の理解促進に対する取り組みも始まっていると実感しました。それでも、「職場の風土醸成には未着手」「業種や職場によって温度差、取得状況の差がある」といった課題は多く残っていることも知りました。

企業や職場は取得に前向きで、新たな制度や施策を充実し始めるなど、環境も整いつつあるのに、どうして当事者にとって、「取得しやすい風土」や「周囲の理解・サポート」への不安が拭えないのでしょうか。

新たに浮かんだこの課題を明らかにするために、インタビューは次のフェーズに移行しました。

 

違う視点から男性育休を見てみよう!

 

私たちが次に重視したのが、当事者にとっての「周囲」である、引継ぎをうけた同僚や、上司の方の声でした。

1か月前後以上取得をした方には、「上司・同僚への業務引継ぎ」が発生しています。
チームをマネジメントする立場からすると、属人化した業務の代替要員がおらず、「抜けられると困る」という対応や、復職時に「これからはまた切り替えて仕事頑張ってくれよ!」と声をかけたという経験談もありました。一方で、男性育休を取得する部下だけを優先することはできず、チーム全体を見て、不在者が出る期間を乗り切るための視点は、マネージャーならではと感じました。そしてそこには、見えない努力や配慮が行われていることも知りました。

同僚の方にとっては、育休取得中の引継ぎ対応は、通常の自分の業務にプラスされる内容です。それでも皆さん、「不満」というほどの声は聞かなかったものの、「戸惑い」や「不安」は多く聞かれました。
業務負荷があがる中で、社内外の関係者とのコミュニケーションや、引継ぎ時には聞いていなかったイレギュラー対応、トラブル対応など、私たちが称賛を送りたくなるほど、懸命な同僚の方の努力を知りました。

「復職されたときに、何も問題なかった状態で戻せるように頑張るだけです」…特に印象に残った同僚の方の発言です。

上司・同僚・取得当事者・・・異なる立場の視点に立って男性育休にまつわる課題やニーズを見てみることで、大事なポイントを強く実感しました。

 

〈インタビューで実際にいただいた声を抜粋してご紹介します〉
 ✓1か月以上取得すると、不在時に進んでいる想定だったタスクが滞留していないか、方向性がズレてしまうのではないかと不安になる(30代/当事者)
 ✓数か月抜けると、業務内容だけではなく人間関係や体制も変わってしまう不安がある(30代/当事者)
 ✓休む前は、数か月休むと自分の役割やポジションがなくなってしまうのではと不安だった(30代/当事者)
 ✓引継ぎ準備のために労働負荷が増えたが、復職後に業務の棚卸と整理の機会になっていたとポジティブな面を感じた(30代/当事者)
 ✓復職後に上司からかけられた声は、「ここから切り替えてまた頑張って」だった(20代/当事者)
 ✓担当者間で取得に対してネガティブな感情はない。やるっきゃない、という感覚(20代、サポーター)
 ✓引継ぎは表面上理解していても、突発的な出来事への対応や聞いていた話と違うことが起こった時こそ大変(30代/サポーター)
 ✓数週間程度の短期で引き継がれる情報の精度は、思っている以上に低いんです。それでも、同じ会社なら100%理解してるでしょ、というスタンスでクライアントから接せられる場面にいかに対応するか、です(30代/サポーター)
 ✓先輩から自分に期待があって引き継いだなんて思えないですね。終わってから言われてもキレイごとに感じます(20代/サポーター)
 ✓自分にとってはそつなくこなせる内容だが、若手にとっては成長の機会になると思う(40代/サポーター)

 

「誰かのため」だけではなく、あらゆる立場に立って考えること

 

改めて企業の方にお聞きすると、「男性育休取得者を支えた同僚の方」に対する視点や施策を講じている企業は、まだほとんどありませんでした。法改正が進む中、まずは環境の整備が最優先なので、そこまで手が回らない、というのが現実だと思います。
しかし、男性育休の取得促進をするうえで、「取得当事者のため」という視点を追求しすぎた施策が進んでいくと、一方で努力や苦労をして支えている存在が置いてきぼりになるリスクもあります。
男性育休を推進するうえで、それに関わるあらゆる立場の社員に目を向けること・・・、多くの企業が賛同してくださいました。

こうして、私たちが、今まさに活動内容を検討している中で、ブラさず大切にしたい軸が生まれました。

 

次回の記事では…
プロジェクトでは「男性育休の未来のあたりまえ」とは、どういったものなのか?を日々考えています。

その検討において、大切な仲間となる存在をご紹介したいと思います!楽しみにお待ちください。