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2021.11.19
  • CO-CREATION

【#Pickup STARTUP】生活者に届く「食」体験を作る、FULLLIFEとの事業開発

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「DNP INNOVATION PORT」とさまざまなスタートアップ企業の取り組みを紹介していく本コーナー。第2回では、FULLLIFEの豊田代表取締役と、DNPの小泉と中村が、「Food Communication」のプロジェクトを通じて、どのように両社の強みを掛け合わせて協業を進めているのかをお話しします。

 

■ FULLLIFEとDNP、互いの熱意から始まった商品開発

・はじめに、FULLLIFE株式会社について教えてください。

ー豊田 FULLLIFEは食品の保形性向上原料を開発製造、販売しています。主にクリーム類を溶けにくくしたり、崩れにくくするような食品原料で、たとえばアイスクリームがテイクアウトしやすくなるなど、保形性やデザイン性の高い商品を供給できるようになります。

私たちの拠点は金沢にありますが、都内の企業との提携を増やしたいと思い、2018年にベンチャー企業が集まる勉強会でピッチを行うなどの活動をしていたんです。そこでDNPの小泉さんと出会ったのが、今回の協業のきっかけです。

 

ー小泉 当時は僕たちも部署を立ち上げたばかりで、情報収集のためにスタートアップが集まる場には定期的に参加していました。そこで豊田さんの登壇内容に惹かれたのが始まりでしたね。

・一般的に食品を取り扱う印象がないとされるDNPですが、なぜ協業を期待されたのでしょうか?

ー豊田 一つは、これまで商社から協業のオファーを多くいただく中で、関連の取引先に限定されたネットワークに課題を感じていました。その中で、DNPは食品業界でいうとフラットな立ち位置でいらっしゃるので、より幅広いネットワークでお付き合いを広げていけると考えたのが理由です。

もう一つは、DNPの企画力への期待が高くありました。私たちの原料を使用したアイスクリームはスーパーに並ぶ商品と競合するものではなく、デザイン性や企画と合わせた展開で勝負していくものなので、高い企画力やコンテンツを沢山お持ちの点がとても魅力的でした。

 

・ DNPサイドでは、FULLLIFE社のどのような点に惹かれていましたか?

ー小泉 はじめにパッと思いついたのは、保形性を活用してキャラクターのアイスクリームを製造している点で、DNPの容器製造等の既存事業とシナジーがありそうだということです。そして「溶けないアイスクリーム」のキャッチーさ。これまでにない圧倒的なインパクトや、独自の技術をお持ちの点に興味をかきたてられました。

ただそれ以上に、僕としては楽しいことができそうという感覚に動かされた部分が大きいです。初めて豊田さんとお話ししたときから、一緒に楽しいことをやっていきたいというマインドが合致していたので、それならばどうやったら面白くなるかの方法や展開先を一丸となって考え、今日まで進んできました。

 

・具体的な事業案をもって協業を始めたのではなく、一緒に取り組みをつくりたいという意思から事業共創がスタートしたんですね。

ー中村 僕たちの部署では個々人のやりたいことにフォーカスしてプロジェクトを立ち上げてきたので、「食」に関する楽しい事業をつくりたいという小泉の熱量が周りを動かしたんだと思います。最初は毎週の定例会でお互いの情報交換をするなどして、事業化が始まってから今では週3〜4回はWeb会議で話すなど、2年以上に渡り密にコミュニケーションを重ねています。

 

ー豊田 面白いなと思ったのが、DNPの皆さんは初めて食品事業に取り組むのならメジャーなことをやりたいんだろうと考えていたんですが、「溶けないアイスクリーム」といった変化球にいきなり取り組むことになって(笑)始めは一緒に製造現場を査察するなど、私たちの食品事業やその慣習を知っていただく期間も長く設けてくださり、その後もストレスなく仕事を進めることもできました。

 

■ 共に走り続け、食ビジネスのパートナーへ

・現在メインの共同開発商品であり、FULLLIFEの独自技術を活用した「アイスボーール」はどのようなプロセスで実現しましたか?

ー小泉 豊田さんとのディスカッションの中で、「溶けにくいアイスができるのであれば、溶けにくい氷もできないか?」というアイディアが出てきました。それ自体がアイスボーール誕生の瞬間です。そのアイディアを、イベントで登壇されていたアサヒビールさんにご挨拶を兼ねてご紹介したところ、興味を持っていただきました。3社でのディスカッションを経て丸い型で作った「アイスボーール」を使用した「BEER DROPS」の商品化が実現しました。アサヒビールさんのスピード感も非常に早く、紹介後すぐに試飲会が行われる等、早々に実現に至ったんです。現在は日本全国の累計200店舗ほどで商品を提供しています。

 

ー豊田 ただ、ちょうど商品を置いてくださる新店舗開発を進めていた中で、初の緊急事態宣言と重なって急に新店舗開拓が止まってしまったんです。こうも変わるのかと、当初は肩を落としかけましたが、DNPのサポートもあって前をむき続けられたのは忘れられないエピソードですね。自分一人ではなくパートナーがいること自体がとても心強かったし、皆さんがずっと伴走してくれたからこそ、今でも「アイスボーール」の事業が進み続けていると思います。

 

ー中村 僕たちからしても、コロナ禍での困難も一緒に前向きに乗り越えられたからこそ、FULLLIFEの技術が今の「Food Communication」プロジェクトの肝になったと思っています。

 

・DNPとの協業に抱いていたイメージについて、期待通りだった点や、期待と異なった点はありますか?

ー豊田 まず、DNPが持つネットワークや信用、ブランド力はイメージ以上でした。私たちが製造工場に食品の製造依頼について話を持ち込んでも、与信的な部分で通らないことが多いですが、そこにDNPが入ることで非常にスムーズに事が進みます。これは、DNPが長年培われてきた社会との信頼関係があってこそだと感じました。

あとは、良い意味で期待を裏切られた点ですが、大企業との協業では企画費だけ支払われた後は実働に入り込まない形が多い中で、一緒に製造現場を見に行ったり何度も実験も重ねてきて、泥臭い部分をも厭わない皆さんの姿勢を強く感じましたし、それによって企画に命が宿っていくことも実感できました。

また、技術面でいうと、今までは研究体制やリソースに偏りがあったところを、DNP自体が持つ研究部門が、原料の細かい開発内容についてもバックアップしてくれたところが大きく助かりました。

 

ー中村 印刷会社の研究というと印刷技術開発などのイメージがあると思いますが、事業領域が広い分、研究で取り扱う素材とその知見も多くあります。FULLLIFEの食品原料についても一つの素材研究という点でご協力できていると嬉しいです。むしろ研究メンバーは、食品という今までにないテーマなので面白がって積極的に協力してくれました。

 

ー小泉 食品を直に取り扱うこと自体が、DNPとしても大きな分岐点になると感じています。FULLLIFEの技術力があるからこそ、外部にもしっかり開発しているイメージを持っていただくことができますし、オリジナリティある商品を通したインパクトが生まれています。このプロジェクトを通じて、FULLLIFEとは互いになくてはならないパートナー関係を築けてきたことを誇りに思っています。

 

最後に、今後の協業への意気込みを聞かせてください。

ー 豊田 DNPは、売れる数以上に社会へのメッセージを重視していると感じます。なので、社会貢献という観点での取り組みを一緒に広げていきたいですね。そして、一緒にアイスクリームの新たなひとつのジャンルを作れたら嬉しいです。

 

ー中村 まずは一緒に成功事例を増やしていきたいですよね。たとえば、アイスが溶けない技術を暖かい気候の国で使いたいといった声を多くいただいているので、海外展開の事例をつくるのも面白そうです。コロナ禍でなかなか海外展開は進めづらい状況でしたが、もともとは海外展開も見据えて動いていたので、状況を見てトライしていきたいですね。

 

ー小泉 それでいうと、国内外も含め、FULLLIFEさんと一緒にアンテナショップのような実店舗の出展にも挑戦してみたいです。BtoCのビジネスは僕らとしても初めてだし、食は最終的に生活者に届くものだということを実感できたら良いですよね。

 

ー豊田 実際の店舗や商品を通して生活者の方とコミュニケーションが生まれることで、理屈抜きに「これをやっていて良かったな」と思える瞬間に出会えるかもしれないですね。

 

・豊田代表、どうもありがとうございました!

FULLLIFEとDNP、互いの熱意から始まった協業を形にして、商品として生活者の元に届けていく。これらを実現する中で、両社が築いてきた食ビジネスのパートナー関係や、それぞれの期待を超えたアセットや技術活用についてのお話をFULLLIFE豊田社長からも伺うことができました。

今後も一緒に成功事例を増やしていくとともに、新たなスタートアップ企業との取り組みへのチャレンジも加速させていきます!