DNP×CINCA 大企業にスタートアップのマインドとスピード感を!【前編】|OneABスタジオ2024

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“新規事業を同時多発的に生み出し続ける場所”というコンセプトのもと発足した、新規事業創出プログラム「OneABスタジオ」。当事者が語る、立ち上げに至るまでの背景や大企業における新規事業開発に対する思いとは――。
大日本印刷(以下、DNP)からOneABスタジオ発足メンバーである佐藤氏と金井氏、立ち上げ段階からご協力いただいている株式会社CINCA(以下、CINCA)から佐倉氏とセガワ氏、の4名にお話を伺ってきました。
本対談の様子を、前後編の2回に分けてお届けいたします。
今回はその【前編】です。

株式会社CINCA とは
「レンタル新規事業室」を中心に、中堅・大手企業向けの“新規事業の立ち上げに特化”した支援サービスを展開。一般的なコンサルティングとは異なり、少額×短期間での事業検証をはじめ、新規事業立ち上げに必要なプロセスを、少人数のゼネラリストが泥臭く実行まで支援することに特徴。
会社HP:https://cinca.tokyo/
▼前回の記事はこちら
同時多発的に新規事業を創出!「OneABスタジオ」始まる。|OneABスタジオ2024
目次:
Q1.CINCAとDNPの出会い、OneABスタジオ発足のきっかけは?
Q2.OneABスタジオが始動して約3カ月。状況は?
Q3.そもそも「大企業における新規事業」と「スタートアップ」の違いとは?
Q4.大企業における新規事業ならではの難しさと推進ポイントは?
Q1.CINCAとDNPの出会い、OneABスタジオ発足のきっかけは何だったのでしょうか?
金井(DNP):昨年、eiiconさんが運営しているJapan Open Innovation Fesに参加した際に、CINCAが出展されていて、そこで佐倉さんとお話ししたのが最初でしたね。当時、DNPとしては新規事業開発に関して、様々なパートナー会社さんからの支援は受けていたのですが、支援を受けて以降の事業化プロセスにおいて課題をいくつか抱えていて…。その相談をしたところ、お互いの目線が合っていたのか、とても盛り上がったんです。
佐倉(CINCA):鮮明に覚えています。当時、「コンサルティング支援を受けるものの、結果としてうまくいかない」ということで弊社に相談をいただくケースが増えていて、様々な企業の方とお話していました。多くが、ちゃんと失敗しきれておらず、「何故うまくいかなかったのかわからない」といった状況なのに対し、金井さんの場合は、何故うまくいかなかったのかまでしっかりと理解され、仮説立てされていたので話が早かったですね。
金井(DNP):その後、佐倉さんからご連絡をいただき、改めてCINCAさんが提供するサービスの詳細説明を受けました。その中で、新規事業開発のプロセスにおける事業アイデアの発案やハンズオンでの支援方法が、他のパートナーと比較しても手触り感が高く、再現性の高い点に魅力を感じました。CINCAさんのサービスの魅力は理解しつつも、当社内で導入するなら新規事業開発のどこのプロセスに適応させるか?誰を対象にするか?など自分だけでは決めかねる部分があったので、新規事業開発のプログラム設計を担当している佐藤さんに共有と相談をしました。
佐藤(DNP):新規事業開発において多くの課題があった中、とりわけ0→1については手付かずとは言わないまでも、色々な施策を断続的に行い模索している状態でした。0→1は事業開発の源泉でもありますし、まずはそこを建て付けたいなと思っていたところで金井さんの話を聞き、CINCAさんとなら実効性のある取り組みが出来そうだな、と直感的に思いました。
金井(DNP):“スタジオ”のような形でプログラム化できたら良いねといった話もその場で出てきました。佐藤さんや私をはじめ、社内でもともと課題を認識しながらも、なかなか有効な打ち手が見えてこなかった中で、CINCAさんとの出会いをきっかけに構想が一気に膨らんでいった、という感じです。

Q2.OneABスタジオが始動して約3カ月。状況はいかがですか?
セガワ(CINCA):OneABスタジオでは、①アイデア創出、②事業検証とPoC、③事業化 の大きく3つのフェーズを段階的に進めていきます。4月に立ち上がってから7月頭までは、最初のフェーズであるアイデア創出を進めていました。OneABスタジオとしては2030年までに具体的な売上目標がある中で、ブレークダウンするとかなりのアイデアを出さないといけない。いかに沢山の事業アイデアを短期間で生み出していけるか、という部分にこだわって、アイデア発想やブラッシュアップ等のある程度メソッド化されているもののインプットや実践であったり、フィードバックという形でキャッチボールをしながら具体的にアイデアを磨き上げていくなど、我々も横に並びながら支援をさせていただいています。
佐藤(DNP):事業アイデア創出を持続的に行うために、必要なノウハウや型を埋め込んでいっていただいています。もっとも、アイディエーションはプロセスの一部でありゴールはあくまで事業化なので、その後の事業検証やPoC含め、最終ゴールの事業化に向けて数も質も追い求めていきます。
ここまでのアイディエーションフェーズにおけるCINCAさんの伴走を受けた正直な感想ですが、想定以上のクオリティと熱意であるという印象を受けました。アイディエーションだけでもこれだけのノウハウがあり、特にアイデアの壁打ちは、スピード・活動量・質の観点で内製では現状到達できないレベルです。また、生成AIを使ったアイデア出しなど惜しみなくノウハウを提供してもらっています。実際に進めながら、内製出来る部分と引き続き支援をいただきたい部分とが見えてきており、早くも次年度に向けてのスタジオとしての改善ポイントもまとまってきています。
金井(DNP):CINCAさんは元々、事業検証を得意としていると伺っていますので、これから始まるフェーズがより楽しみですね。

Q3.そもそも「大企業における新規事業」と「スタートアップ」の違いとは?
佐倉(CINCA):スタートアップはヒト・モノ・カネがないところから始めるので、市場の歪みがある領域や新しく立ち上がる市場でないと、そもそも立ち上げられないという実情があります。また、資本的な観点では、株式発行によって資金調達をしている場合、急激な成長を必ず求められるため、外からは自由度高く見えても、内部的にはものすごく多くの制約を課しながら進めていくので、立ち上げられる領域がとても狭まっています。
一方、大企業の場合は、スタートアップに比べるとお金や株主周りの制約が薄く、小さい事業や既存事業の派生、もしくはスタートアップと同じことをやってもよい。何でもやれるところからスタートできるのが、大きな違いだと思います。
金井(DNP):大企業のほうが、資源や支援の土台があるので、そういった面で自由度が高い一方、既存事業とのコンフリクト(対立)が足かせになる場合もありますね。既存事業があるゆえに踏み出せない領域であったり、無理に既存事業とのシナジーを求められることで、本質的でない部分に時間を取られてしまったり。潤沢な資産とは裏腹に、推進における障壁が内部から生まれやすい。
結局は、スタートアップでも大企業でも、なにかしらの制約を受けることには変わりなく、それが外側からなのか内側からなのか、どちらのウェイトが大きいかの違いだけなのかもしれませんね。

Q4.大企業における新規事業ならではの難しさと推進ポイントは?
セガワ(CINCA):大企業における新規事業ならではの難しさで言いますと、”人の介在価値が大きい”ことが挙げられるかなと思います。大企業は規模が大きいが故に、マーケティング、営業、開発…といったように、機能がはっきりと分化されているカルチャーがありますよね。ですが、新規事業開発となると、何でもやらないとならなくなります。プロダクトを作りながら、自ら売り先を探さなければならないし、マーケティングはもちろん、業界法への適応や契約関連の整備も…、横断的に物事を進めていかないと事業は立ち上がりません。
大企業の分業カルチャーの中で、社員個人が新規事業開発に自身の行動をフィットさせるところに、難しさがあるのではないか、と感じています。
金井(DNP):いわゆる縦割りで、モジュール化されている状態でも、いかに新規事業を推進していけるかという部分については、個人のマインドの問題が大きいですよね。「マーケティング部門所属だけど、営業やるっす」といった感じで、与えられた領域飛び出して越境しまくるというのは、個人の考え方とやる気にどうしても依存する。今まで社内で求められてこなかった分、マインドシフトが難しいし、時間がかかりますね。組織やルールなど、システム的な対応だけで変化するものでもないので、本当に難しい。
佐藤(DNP):大企業は、ブランドやヒト・モノ・カネ、活用できるものはたくさんあるが、直近のP/Lや経営計画に寄与するかどうかという視点では、新規事業は優先順位が下がってしまいがちです。社内で進んで味方になってくれる人が少ないという前提で、それでも周囲を巻き込むために突き進む推進力とマインドが個人レベルでは必要だと思います。大企業は何でも与えられると思ったら大間違いで、様々な障壁が出てきた時にそれらを突破し、賛同してくれる人が一人増え、次の障壁をクリアしたらまた推進メンバーがアサインされるといったように、味方を自分で増やしていかなければならない部分も実態としてはあります。
一方で、そういったマインドを個人に依存せずとも、道筋が決まっていて、それなりに能力とやる気がある人がルートに乗れば事業化を進めていける環境を建て付ける必要があるとも感じています。それが、今回のOneABスタジオだったりします。
個人としてのマインドと環境づくり、両輪で進めないとうまくいかないと考えています。

【後編】に続く…