(特別企画)対談:キーパーソンが語る“DXB”の現在地とこれから【前編】 ―DNPとBIPROGYが共に描く未来社会の姿―
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大日本印刷(以下、DNP)とBIPROGYが業務資本提携を行った2012年8月から約12年が経過した。現在、提携以前から培われた信頼を基礎として協力関係はさらに厚みを増し、具体的な協業案件も増えている。例えば、両社のコラボレーションは、XRやメタバース、データセンター構築、電子図書館、AI・量子コンピューティングなど社会課題の解決に向けて幅広い領域で進行している。
今回、こうした“DNPとBIPROGYの取り組み(以下、DXB)”について、DNPの宮川尚氏とBIPROGYの大嶽秀人という2人のキーパーソンが対談し、その現在地と未来像を語り合った――。
“DXB”の「D」と「B」をつなぐ「X」は「未知数」と「コラボレーション」を示し、両社の共創により創造される新たな可能性を示している。本企画では、その対談の模様を前後編に分けてお届けする。前編では、まずDXBのこれまでの歩みを中心に紹介していきたい。
「DNP×BIPROGY」のシナジーを追求する
――まず、お二人が現在取り組んでいる業務についてお聞かせください。
宮川 DNPは2021年に、リアルとバーチャルの空間を融合して人々の体験価値と経済価値を高める「XRコミュニケーション®」事業を開始し、非日常的な体験も可能な各種企画を展開しています。また、2023年に発表した中期経営計画(2023~2025年度)において、コンテンツ・XRコミュニケーション関連を注力事業領域に位置付けています。この経営方針に基づき、2024年4月にコンテンツ事業とXR/メタバース事業が統合され、「コンテンツ・XRコミュニケーション本部」が設立されました。組織の中で、私は主にXR/メタバースに関わる事業開発を担当しています。
事業推進にあたっては、これまで物理的な制約ゆえに解決が難しかったコミュニケーション上の課題をXRやメタバースなどの先端技術を用いて克服できるのではないか、との思いで日々過ごしています。
そして、リアルとバーチャルがシームレスにつながるワールドを構築し、その実装を通じてさまざまな社会課題の解決に貢献したいと考えています。そのためにはXR/メタバースだけでなく、AIや認証、安全・安心を実現する多様な要素技術も必要だと考えています。
BIPROGYとの業務資本提携は2012年に実施され、2024年で13年目に入ります。提携以前からの取引関係で培われた信頼を基礎に、さまざまなレベルでの協業領域が継続的に拡大しています。
大嶽 「DXBインキュベーション部」は、BIPROGYグループ内外の知見を活用したDNPとの事業推進を加速するために両社の業務資本提携時に設立されました。その大きなミッションは、DNPのイノベーションやDX推進を支援すると共に、「DNP×BIPROGY」のシナジーを追求することです。こうした使命のもと、多種多様な活動に参画しています。そして私たちの取り組みには、主に4本の柱があります。
第1に、連携売上拡大に寄与する「DXB案件」の創出です。DXを推進するテーマを発掘すると共に、保有IP(知的財産、Intellectual Propertyの略)のメニュー拡大やサービス化推進などを行います。第2に、共同事業を発掘し、その事業化を推進すること。その際、戦略、シーズ、イベント、投資という4つを起点に両社で議論を深めています。第3には、マーケティング・コミュニケーションチャネルの強化が挙げられます。お互いのチャネルを有効に活用することで、お客さまとの接点を拡充しています。ここには共同の教育・研修活動なども含まれます。そして第4に、広範な領域で意欲的・主体的にDXB案件を推進する能力を育成・強化するための取り組みです。
さまざまな領域においてDXB連携を推進。さらに将来を見据えた人材交流も
――大嶽さんは長く、DNP担当のアカウント部長をしてこられましたね。
大嶽 はい。DXBインキュベーション部長に着任したのは2024年4月で、それまでの約10年はDNP担当のアカウント部長でした。そうした立場で、DNPにおけるコミュニケーション基盤の構築などをサポートしました。宮川さんから先ほどご紹介がありましたが、両社の業務資本提携は2012年8月のことです。以前からの取引で培われた信頼関係もあり、提携以降も両社の協業領域は着実に深まっており、BIPROGYはDNPの幅広い分野でシステム構築、運用などに参加しています。
業務提携後に実現したことの一例が、データセンター事業の立ち上げです。当社とユニアデックスは当時、すでにデータセンターとクラウドのサービスを提供していました。そのノウハウを生かしてDNPと協業し、「DNP柏データセンター」の開設につながりました。
――DXBの連携について、データセンター以外の事例も教えてください。
大嶽 「電子図書館サービス」はその一例です。このサービスはDNPとBIPROGYに加えて、数社のコラボレーションで実現しました。サービス開始は2014年。住民が図書館に行かなくても、ネットを使って無料で電子書籍を読めるもので、現在では全国700以上の図書館に導入されています。大きな特徴の1つは、自治体が契約するとその地域の公立学校でも利用できる点です。文部科学省が推進する「GIGAスクール構想」により小中学校で1人1台ずつ端末が配備されたこともあり、自治体の関心は高まっています。
もう1つ、企業向けの学習管理システム「LearningCast」を活用したコラボレーションがあります。これはeラーニングと集合型研修の受講管理業務を統合的にサポートするサービスです。DNPは販売代理店として、お客さまとの接点を担っています(例:スポーツ競技団体向けコンプライアンス教育サービス)。累積契約は150社超で、アクティブなユーザー企業は約40社。DNPには、教育事業やマニュアル作成で豊富なノウハウがありますので、今後、DXBの関係深耕により、サービスをさらに拡充していきたいと考えています。
また、人材交流の面でも中長期的な目線から協業を図っています。その具体例として、DNPとBIPROGYは2023年から、新入社員(営業・企画採用)の合同研修を行っています。全新入社員ではありませんが、2回目となる今回(2024年実施分)は、DNPから66人、BIPROGYから47人、計113人の新入社員が参加しています。来年はさらに参加者を増やして実施したいと考えています。新入社員ですから、自社のことも詳しくは知らない段階です。先入観のない若者同士が関係を結ぶことで、シナジーを生み出す土壌はより豊かなものになると期待しています。
宮川 提携のニュースを聞いたときの驚きはよく覚えています。あれから12年以上が経過し、今年で13年目。両社の信頼関係の厚みは増しています。部門にもよりますが、DNPの社内でBIPROGYの方々と気軽に相談や議論をする姿をよく見かけるようになりました。とても心温まる瞬間です。
また、若い社員間の交流の活発化には大いに期待しています。特に、若い世代は社会課題への感度が高い。両社の若手が集まって部門横断、技術横断的に課題解決に向けて協業する機会は今後増えるでしょう。
――後編に続く
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