スマートシティによる地方創生モデルを三重から全国へーー「美村」プロジェクトの目指す未来とは
- 地域におけるDX推進に取り組みたい企業
- 地方創生・スマートシティ事業に関心のあるスタートアップ
- 地方での起業や事業展開を目指す人・企業
- 持続可能なまちづくりに参画したいスタートアップ
2023年1月に誕生した「美村」は三重県中・南部の多気町・大台町・明和町・度会町・紀北町が連携し、デジタル技術を活用した地方創生を目指す仮想自治体です。DNPはDXプラットフォームの運営に取り組んでおり、デジタルシステムやデータの活用によって「美村」をさらに魅力的なブランドとして育成・強化をするためのパートナー企業を募集しています。
今回は「美村」立ち上げの中心人物であるDNPモビリティ事業部・新事業開発部 部長椎名隆之氏と、共創パートナーである株式会社アクアイグニス代表取締役・株式会社ヴィソン 多気株式会社代表取締役立花哲也氏から「美村」の構想やスマートシティによる地方創生の展望についてお話をお伺いしました。
デジタル田園都市国家構想採択によって前進した「美村」プロジェクト
ーーおふたりの出会いと、DNPが「美村」プロジェクトとスマートシティ事業に関わることになったきっかけ背景を教えてください。
椎名:立花社長が運営するリゾート施設の自動運転モビリティ運行管理システムを担当したことが最初のきっかけです。タイトなスケジュールではありましたが、アプリから自動運転のシステム開発までできる限りのことに取り組みました。
立花:短期間にも関わらず素晴らしい成果で、大日本印刷という印刷事業の老舗企業が、モビリティ事業に思い切ったチャレンジをし、実際にMaaSの実績を積み上げている印象を持ちました。そこで、「美村」プロジェクトも椎名さんの機動力を信頼して指名させていただき、提携企業や5つの町との連携とDX推進を一緒に取り組むことになったんです。
椎名:立花社長はDNPの持つ技術やアセットに対して魅力を感じていただいていたと思いますが、仲間集めのように私に声をかけてくださった印象もあり嬉しかったですね。
ー「美村」プロジェクトを進めていくなかでターニングポイントはありましたか。
立花:2022年6月にデジタル田園都市国家構想に「三重広域連携モデル」が採択されたことです。プロジェクトが大きく前に進む成果でもありました。業界の垣根を超えて、 様々なコンテンツがデータ連携できるようになり、デジタルの街として成り立たないと大きな成果には結びつきません。一つのコンテンツだけがうまくいくのではなく、共創する企業同士が手を取り合い面白いものを作り上げていく意識を持ってスタートできたことが一番のターニングポイントだと思います。
椎名:声をかけていただいた時点では、データ連携基盤やMaaSといったデジタルを活用した街づくり「スマートシティ」の取り組み はまだ始まっていませんでした。そこでDNPは情報コミュニケーションの役割を担い、各コンテンツの立ち上げから、行政・提携企業とデータを連携した「美村」プロジェクト全体の運用に関連する プラットフォーム の構築まで行いました。
ー「美村」の取り組みを推進するためにリアルな場として立ち上げた大型複合リゾート「VISON(ヴィソン)」は観光客のみならず地域住民が多く利用されていると聞きました。地域住民の方たちの巻き込みを図る理由を教えてください。
椎名:一般的なスマートシティはメーカーの最先端の技術に目が行きがちですが、商業施設は地域の方に受け入れてもらい、足を運んでいただくことが長続きする秘訣だと思います。同様の理由から、地域共通ポータルサイト「美村」 やデジタル地域通貨「美村PAY」 を今年より開始し、施設と地域の連携をさらに深めています。
スマートシティ「美村」モデルを全国へ
ーVISONがオープンし「美村」プロジェクトが本格始動した今、DNPが担う役割がさらに重要になりますね。
椎名:DNPのリソース提供がゴールになることも多いですが、私としてはそこで終わりではなく、提供したリソースを利用して地域住民や観光客が便利だと感じ、地域の経済が生まれていくゴールまで目指していきたいです。三重県の地方エリアでひとつのロールモデルをつくり、そこから全国で地方創生を推進している地域に展開したいと思っています。
立花:VISONには全国からたくさんの方が視察に訪れていただき、日本の地方創生にインパクトを与えていると感じています。「食文化」をテーマにし、地元地域のメーカーの店舗のみが立ち並ぶ施設は他にはないでしょう。チェーンの商業施設は全国どこにでも存在するなかで、地元のメーカーを残すことが地方創生に繋がると考えています。デジタルを強化することで地域のアナログな文化を残し、継続・発展させていくことは可能なのではないかと私は思います。衰退していく地方をデジタルの力でもう一度成長させていくことが我々がやるべきことなのではないでしょうか。デジタルで地域創生を目指す 「美村」プロジェクトのモデルを全国に展開していきたいです。
ー「美村」プロジェクトとしては今後どのような展開を目指しているのでしょうか。
椎名:ポータルサイトやデジタル通貨、デジタルマーケティングのサービスを育てて地域に還元していくことですね。例えばデータの所有権は地域が保有してデジタルマーケティングに活用できるようにしたり、デジタル通貨の手数料を地域に還元したり、地域で経済が回るようにしたいです。地域の人たちだれもがサービスを利用することで、地域内での消費や観光収入が増えると雇用が生まれるはずです。仕事がないことを理由に地元を離れてしまう人が多いという課題に対し、スマートシティが新しい経済を生み循環することで、地域でも最先端の仕事に携われるようにしたいです。
立花:「美村」モデルは確立しつつあり、全国のみなさんが参考にしてくださるような事業になると思っています。全国だけでなく世界にも展開できるのではないでしょうか。ぜひ椎名さんと一緒にこれからも取り組んでいきたいですね。
DNPのソリューションと「共創」による掛け合わせで、進化を目指す
ーDNPは行政や業界の垣根を超えてDX推進をサポートしています。椎名さんの視点でDNPならではの強みやオリジナリティーはどんなところだと感じますか。
椎名:社内でさまざまなジャンルのソリューションに携わる人が多いことですね。DNPは教育、アート、金融など幅広い分野で取り組みをしているので、あらゆる課題に対してDNPチームで一貫してご提案することが可能です。スマートシティは生活全般に関わるサービス設計が必要なので、一つの分野に留まらず、さまざまな分野に携わる弊社はスマートシティ事業への取り組みにスムーズに対応ができるのではないでしょうか。
ーDNPは共創を大切に事業やプロジェクトに取り組みをしています。椎名さんご自身の仕事のスタンスでも大切にされていますか。
椎名:いままでの経験として共創をしないと物事は進まないと実感しています。自分たちの意志があり何かに取り組みたいときは、プロジェクトを動かす側でないと、うまくいきません。私が部署を立ち上げた際には、受注事業はやらないと明確に決めました。受注ではなく“協業”することで、自分たちの事業として成長できるのではないでしょうか。今回の「美村」のプロジェクトも立花さんと一緒に共創することで生まれた成果だと思っています。
これからも「美村」プロジェクトは新しいコンテンツを準備しています。DXによる地方創生ビジネスを展開したい企業、開発した技術・サービスの社会実装に取り組みたい企業の方はぜひお問い合わせください。
*「美村」プロジェクトや参画に関する詳細はコチラの記事をご覧ください。