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2026.06.01

OneABスタジオ2025体験記:MVP開発で気づいた「作る前」に考えるべきこと

OneABスタジオ2025体験記:MVP開発で気づいた「作る前」に考えるべきこと
この記事はこんな人におすすめ
  • 新規事業創出に興味がある企業
  • 大企業との事業共創・オープンイノベーションに興味がある企業
  • これから新規事業開発に挑戦しようとしている方

こんにちは。DNP INNOVATION PORT運営の富岡です。
2025年度のOneABスタジオに私自身が参加者の一人として体験したことを発信するために始めた体験記は今回が最終回となります。

前回の記事では、フィジビリティ・スタディ(F/S)フェーズにおける「価値検証インタビュー」をテーマに、顧客インタビューを進めるうえで押さえておきたいポイントをご紹介しました。

今回取り上げる、PoCフェーズでは検証の内容はさらに一歩進みます。
考えた解決策を、実際に顧客へ価値提供できる形にできるのか。顧客が満足できる体験として提供できるのか。ここを確認していくフェーズになります。
その中で重要になるのが、MVP開発です。
MVPという言葉を聞くと、「まずは小さく作る」「最低限の機能だけで出す」といったイメージを持つ方も多いかもしれません。もちろん、作り込みすぎないことは大切です。
ただし、単に機能を削っただけでは、顧客に価値が伝わらず、正しい検証にならない可能性もあります。
この記事では、OneABスタジオに参加する中で学んだ内容をもとに、PoCフェーズでMVP開発に取り組む際に押さえておきたいポイントをまとめていきます。

これからMVP開発に取り組む方にとって、少しでも参考になれば幸いです!

OneABスタジオとは?(おさらい)

OneABスタジオは、大日本印刷(以下、DNP)のABセンターが主導する新規事業創出プログラムです。

「新規事業を同時多発的に生み出し続ける場所」というコンセプトのもと、社員自らが0→1の事業創出に挑戦することを目的としたボトムアップ型の活動基盤で、事業アイデアの創出から事業化までを一気通貫で実行できる体制を整備しており、社員の挑戦を全力で支援する仕組みになっています。
このプログラムは、株式会社CINCA(以下、CINCA)の協力のもとに設計されており、各フェーズにおいてもCINCAがメンタリングや伴走支援を参加者に提供します。

株式会社CINCA とは
「レンタル新規事業室」を中心に、中堅・大手企業向けに新規事業立ち上げに特化した支援サービスを展開。新規事業創出における行動やプロセスを定型化し、再現性と成功確度を高める支援に加え、クライアントの自走を促す仕組みづくりが特徴。(会社HP:https://cinca.tokyo/


~プログラムの流れ~

OneABスタジオは、以下の3つのフェーズで構成されています。

  1. アイデア創出フェーズ
    顧客の課題を深く理解し、それに基づいた事業アイデアを創出するフェーズです。市場リサーチや社内外の知見を活かして、課題に対する仮説を立て、その解決策としてのアイデアを構築していきます。CINCAによる壁打ちやフィードバックを通じて、アイデアの精度を高めていきます。
  2. フィジビリティ・スタディ(F/S)フェーズ
    アイデア創出フェーズで出た事業アイデアに対し、顧客課題が実在するのか、また解決策の受容性があるのかを検証するフェーズです。具体的には、顧客インタビューや仮説検証を通じて、「その課題は本当に存在するのか?」「その解決策に価値を感じてくれるか?」を見極めます。
  3. PoC(概念実証)フェーズ
    有望なアイデアは、PoCフェーズに進み、実際のプロトタイプやサービスとして検証されます。ユーザーからのフィードバックを通じて、実際の価値提供が可能かを確認し、事業化に向けた最終的な判断を行います。

MVP開発で押さえておきたい4つのポイント

ここからは、MVP開発に取り組むうえで、特に押さえておきたいポイントを4つ紹介します。

1. MVPは「小さいプロダクト」ではなく「価値提供できる最小限のプロダクト」

MVPは「Minimum Viable Product」の略です。
日本語では「実用最小限の製品」などと訳されることもありますが、特に意識したいのは、Minimumだけではなく、Viableの部分です。

つまり、単に小さいことが大事なのではなく、顧客に価値提供できる状態であることが重要です。MVPという言葉を聞くと、どうしても「機能を削る」「簡易版を作る」といった方向に意識が向きやすくなります。もちろん、最初からフル機能で作り込む必要はありません。
ただし、顧客が価値を感じられないほど機能や品質を削ってしまうと、それは検証対象として不十分になってしまいます。顧客が使ってみて、「これなら課題解決につながりそう」「この体験なら利用したい」と思える水準を満たしている必要があります。

MVPで考えるべきなのは、「どこまで削れるか」ではなく、「どこまであれば顧客に価値が伝わるか」です。MVP開発では、この問いをチームで何度も確認することが大切だと感じました。

2. いきなり作り込まず、検証目的に合った作り方を選ぶ

MVPを作る方法は一つではありません。

既存サービスを組み合わせて作る方法もあれば、ノーコード・ローコードツールを使う方法、エンジニアに依頼して開発する方法もあります。
それぞれにメリット・デメリットがあります。
既存サービスの組み合わせであれば、比較的短期間かつ低コストで形にしやすく、改善もしやすいというメリットがあります。一方で、自由なカスタマイズや拡張には限界があります。
ノーコード・ローコードは、ある程度サービスらしい形を作りやすい一方で、複雑な機能の実装には向かない場合があります。
スクラッチ開発は、自由度や拡張性が高い一方で、費用や期間が大きくなりやすく、改善にも時間がかかることがあります。

MVPの開発では、「今回検証したいことに対して、どの作り方が最も適しているか」を考えることが重要です。開発が目的化してしまうと、時間も費用もかかる一方で、肝心の学びが得られないということになりかねません。
そのため、検証目的を明確にしたうえで、その目的に対して過不足のない作り方を選ぶことが大切だと感じました。

3. 言葉だけで進めず、早めに可視化して認識をそろえる

MVP開発では、チーム内で「何を作るのか」の認識がずれやすくなります。
言葉だけで話していると、同じサービスの話をしているつもりでも、それぞれが頭の中に描いている完成イメージが違うことがあります。
「ユーザーが情報を登録する」「検索できる」「担当者に連絡できる」といった言葉だけでは、画面の流れや操作感、必要な機能の粒度までは十分に共有できません。
そのため、MVPを具体化する際には、早めに可視化することが重要です。

例えば、以下のような流れで進めると、チームの認識をそろえやすくなります。

  1. 競合・類似サービスのUIを調べる
  2. 顧客が利用する流れをUXフローとして整理する
  3. 手書きやホワイトボードで画面ラフを作る
  4. デザインツールなどで画面イメージを具体化する
  5. エンジニアと相談しながら開発範囲を決める

ここで大切なのは、きれいな資料を作ることではなく議論できる状態を作ることです。
たたき台があることで、「この画面は本当に必要か」「この操作は顧客にとって分かりやすいか」「この機能は今回の検証に必要か」といった具体的な議論ができるようになります。

MVP開発では、言葉だけで議論し続けるよりも、まずは見える形にしてみることが大切だと感じました。

4. プロダクトだけでなく、提供オペレーションまで含めて設計する

MVP開発というと、画面やシステムなどのプロダクト開発に目が向きがちです。

しかし、新規事業におけるプロダクトは、ソフトウェアだけではありません。顧客が体験する一連の流れすべてが、プロダクトだと考える必要があります。
例えば、サービスを利用するまでの案内、問い合わせ対応、コンテンツ制作、顧客へのオンボーディング、外注先との連携なども、顧客体験に大きく影響します。
どれだけ画面ができていても、問い合わせ対応が回らなかったり、提供までに時間がかかったり、運用担当者によって対応品質がばらついたりすると、顧客満足度を正しく検証することは難しくなります。

そのため、MVPを提供する際にはプロダクトそのものだけでなく、提供オペレーションまで含めて設計することが重要です。
最初から完璧な業務フローを作る必要はありません。むしろ、MVP段階では、まず一度全体の流れを回してみることが大切です。
実際に回してみることで、どこに作業が滞留するのか、どの対応に時間がかかるのか、どこで顧客の期待値とずれるのかが見えてきます。
そのうえで、ボトルネックになっている部分から優先的に改善していくことで、顧客に価値を届けられる状態に近づいていきます。

MVP開発は、「作ったら終わり」ではありません。顧客に届け、使ってもらい、フィードバックを得られる状態まで作ることが必要です。

MVP検証で見るべき指標

MVPを提供した後は、何をもって検証結果を判断するのかも重要になります。
ここで注意したいのは、見栄えのよい数字だけを追わないことです。事業化前の検証段階では、現在の事業リスクを表す指標を設定することが大切です。

追いたくなる指標はたくさんありますが、「今、一番確かめたいことは何か」を明確にし、それに合った指標を設定することが重要です。MVP検証では、「顧客が本当に価値を感じたか」を見るための指標を意識して設計することが大切だと思います。


おわりに

アイデア創出から顧客インタビュー、価値検証、そしてMVP開発まで一通り取り組んでみると、新規事業を生み出すということは、最初に考えたアイデアをそのまま形にしていくものではなく、仮説を立て、顧客の声や検証結果をもとに何度も見直しながら少しずつ前に進めていくものだと実感しました。

特に、インタビューを通じて顧客の課題を深掘りしたり、MVPとして何をどこまで作るべきかをチームで議論したりする中で、机上の検討だけでは気づけなかった論点がたくさん見えてきました。大変なことも多くありましたが、各フェーズで手を動かしながら検証を積み重ねたことで、新規事業開発において「作ること」以上に「学び続けること」が大切なのだと感じています。

今後も、OneABスタジオの取り組みについて発信していきますので、ぜひご期待ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


アイデア創出フェーズの体験記はこちら

フィジビリティ・スタディ(F/S)フェーズの体験記はこちら

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