OneABスタジオ2025体験記:新規事業アイデア創出の10のポイント【前編】
- 新規事業創出に興味がある企業
- 大企業との事業共創・オープンイノベーションに興味がある企業
こんにちは、DNP INNOVATION PORT運営の富岡です。2025年度のOneABスタジオが始動しています! 私もこの挑戦的なプログラムに参加しており、日々、新規事業案と向き合う濃密な時間を過ごしています。
今回は、この記事を通じて、私自身がこのプログラムに取り組む中で気づいたこと、学んだことを記録として残すと同時に、社内外の皆さんと共有していきたいと思っています。
OneABスタジオとは?(おさらい)
OneABスタジオは、大日本印刷(以下、DNP)のABセンターが主導する新規事業創出プログラムです。
「新規事業を同時多発的に生み出し続ける場所」というコンセプトのもと、社員自らが0→1の事業創出に挑戦することを目的としたボトムアップ型の活動基盤で、事業アイデアの創出から事業化までを一気通貫で実行できる体制を整備しており、社員の挑戦を全力で支援する仕組みになっています。
このプログラムは、株式会社CINCA(以下、CINCA)の協力のもとに設計されており、各フェーズにおいてもCINCAがメンタリングや伴走支援を参加者に提供します。
株式会社CINCA とは
「レンタル新規事業室」を中心に、中堅・大手企業向けに新規事業立ち上げに特化した支援サービスを展開。新規事業創出における行動やプロセスを定型化し、再現性と成功確度を高める支援に加え、クライアントの自走を促す仕組みづくりが特徴。(会社HP:https://cinca.tokyo/)
~プログラムの流れ~
OneABスタジオは、以下の3つのフェーズで構成されています。
1. アイデア創出フェーズ
顧客の課題を深く理解し、それに基づいた事業アイデアを創出するフェーズです。市場リサーチや社内外の知見を活かして、課題に対する仮説を立て、その解決策としてのアイデアを構築していきます。CINCAによる壁打ちやフィードバックを通じて、アイデアの精度を高めていきます。
2. フィージビリティ・スタディ(F/S)フェーズ
アイデア創出フェーズで出た事業アイデアに対し、顧客課題が実在するのか、また解決策の受容性があるのかを検証するフェーズです。具体的には、顧客インタビューや仮説検証を通じて、「その課題は本当に存在するのか?」「その解決策に価値を感じてくれるか?」を見極めます。
3. PoC(概念実証)フェーズ
有望なアイデアは、PoCフェーズに進み、実際のプロトタイプやサービスとして検証されます。ユーザーからのフィードバックを通じて、実際の価値提供が可能かを確認し、事業化に向けた最終的な判断を行います。
今回の記事は…
現在、OneABスタジオ2025はアイデア創出フェーズを進行中。この記事では、私自身が一人の参加者としてアイデアを考えたり、CINCAさんとの壁打ちを実践していく中で得られた、気づきや学びを「新規事業アイデアの創出にあたっての10のポイント」として、2回に分けて共有したいと思います。
今回は、特に初期フェーズで重要だと実感した「課題の特定」や「着眼点の持ち方」について振り返ります。
🔎まずやるべきは「課題の特定」から
① 解決策ありきではなく顧客の課題を明確に
OneABスタジオが始まって最初に学んだのは、「アイデア=事業」ではないということです。最初は「こんなサービスがあったら面白いかも」といった発想から始めがちですが、それではCINCAさんのフィードバックで必ず「それって誰のどんな課題を解決するの?」と返されます。この問いにしっかり答えられない限り、事業としての説得力は生まれないと痛感しました。
② ペルソナは思考のきっかけ程度に
ペルソナを作ること自体は思考のきっかけとして有効ですが、それに頼りすぎると現実にはいない理想の顧客像を作り上げ、実在しないニーズに基づいてサービスを着想してしまう危険性があります。
終活ブームから着想を得て『生前葬をしたい人』向けのサービスを構想しましたが、「実際にやろうと思う人ってどれだけいるの?」と指摘され、身近な人にヒアリングしてみた結果、「興味はあるけどやろうとは思わない」という声がほとんど。仮想の人物像よりも、実際のリアルな声から課題を拾ってくることの方がはるかに重要だと感じました。
💸「金を払う課題」か?を見極める
③ 課題は絞り込んで、お金を払ってでも解決したいものに集中する
フィードバックで繰り返し言われたのが、「それってお金を払ってでも解決したい課題ですか?」という問いです。最初は「あれもこれも便利にしたい」と考えてしまいがちですが、それだとサービスの軸がぶれてしまう。顧客が今どれくらいのコストや時間をかけてその課題を解決しようとしているのかを調べることの重要性を学びました。
例えば「日々のメール整理が面倒」という不満は多くの人が共感しますが、多くのビジネスパーソンは自力でフォルダ分けや既読管理などで対応しており、有料ツールを導入してまで解決しようとはしていません。このように、不満は存在しても“お金を払ってでも解決したい課題”というほどではないケースは多く、課題の強度を見極めることが事業設計の第一歩となります。
④ 深いインサイトは日常生活より業務課題から考える
「日常のちょっとした不便」は、すでに多くのプレイヤーが参入していて競争が激しい世界。一方、業務でのちょっとした非効率や手間には、まだ手がつけられていない“宝”が眠っている可能性がある。私も過去の業務上の経験を振り返り、「そういえば毎回困っていたな」という体験から着想を得たアイデアが、CINCAさんとの壁打ちで一番評価されました。
🚧「やってない理由」を疑う目を持つ
⑤ 競合がいないからチャンスではなく、なぜ誰もやっていないかを分析する
初めてのアイデアに対して「競合がいない!」と喜んだのも束の間、CINCAさんから「競合がいないのは、やる理由がないからかもしれない」という厳しい指摘を受けました。特に、需要や技術面でのハードルがないのに参入がない場合は、その背景に必ず理由があります。
たとえば、体型データに基づいて完全にフィットする服を自動で提案・配送する“パーソナライズドアパレル”の構想は、一時期大きな注目を集めました。需要や技術は十分に存在するものの、継続的な計測の手間や、好み・気分といった主観的要素の複雑さ、「服は自分で選びたい」という感情的な壁が、広く定着しなかった背景にあります。このように、一見ニーズも技術も揃っていながら実現されていない事例には、表に見えにくい“やられていない理由”が潜んでいます。
次回予告(後編)
後編では、「差別化よりも“効く”解決策を」「ステークホルダーは巻き込みすぎない」「成功が難しいビジネスモデルとは?」といった視点から、アイデアをどう磨き、形にしていくかについてお話しします。