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2020.11.20

【共創パートナー CEKAI】インタビュー後編~DNPと共に描く未来のあたりまえ~

【共創パートナー CEKAI】インタビュー後編~DNPと共に描く未来のあたりまえ~

クリエイティブの意味と環境の再構築が求められている

——今回のコロナ禍で世の中に大きな変化が起きていますが、今後、クリエイティブ業界はどう変わっていくと思いますか?

加藤 組織にしばられない「個」が有機的につながって仕事をするという考え方は、ウィズコロナの世界と相性がいいと思いますね。今回のコロナ禍で改めてわかったのは、「クリエイターは変化に強い」ということです。僕らの組織でも、それぞれ自分たちが作業しやすいように環境や方法を変えたり、フィジカルな現場で企画していたものを「今だったらこういう形で実現しよう」と練り直して発表したりしていました。

変わるとすれば、今後、クリエイターは各自で領域を変えたり、越境したりすることがより一層求められるということ。早く、しなやかに動いた人が、次の新しい領域を生み出していくのではないでしょうか。

 

井口 コロナ禍で大規模イベントなど様々なものが延期や中止となる中、ずっと頑張って手がけてきた大きな仕事にも影響があったりして、僕自身の2020年は空白の一年になりました。この一年をどう過ごすべきかをすごく考えましたね。

2011年の東日本大震災のときは、一人のクリエイターとして「一生懸命ものづくりするしかない」という感覚でしたが、今回はクリエイティブの意味や環境そのものを再デザインする必要があると感じています。

DNPと共にクリエイティブ業界や社会をより良く変えていきたい

——C株式会社は2019年7月にDNPと資本業務提携を結びました。約1年が経ちますが、なぜDNPとの提携に至ったのでしょうか?

加藤 最近、ビジネスの世界では「デザイン経営」が注目されていますよね。これまでの企業は、市場価値を起点にビジネスを組み立ててきましたが、現在は、顧客一人ひとりの体験価値が重視されます。また、企業と顧客の接点は多様化していて、製品やサービスだけでなく、ブランド、ビジョン、制度なども含まれます。

こうした時代の中で、デザインの目的とは、有形・無形を問わず、あらゆる顧客体験に焦点を当て、より快適で、感動的で、充実したライフスタイルを提供することだと思います。

 

僕たちは、クリエイターとしてさまざまな企業の仕事に携わってきましたが、最初のうちは、単に「面白いものをつくればいい」と考えていました。しかし今は、「企業と顧客、社会との接点となるインターフェースをどうデザインするか」という発想に変わっています。

プログラム言語がわかる人しか使えなかったパソコンが、デスクトップというユーザーインターフェースの登場によって誰もが使えるツールになったように、ビジネスの進化にデザインやクリエイティブが必要とされる場面は今後ますます増えるはずです。

しかし、僕たち単独では限界があります。クリエイターが提供できる価値を、より広く社会や生活者に届けるためには、社会全体に事業基盤を持つ企業とのコラボレーションが必要だと考えていました。

 

DNPは、文化や芸術の振興に貢献し、クリエイターを支えてきた歴史もあります。クリエイターへのリスペクトも強く、ぜひ一緒にやりたいと思ったのです。——井口さんは映像デザイナーの立場から、今回の提携をどのように捉えていますか?

井口 一生懸命やってきたこれまでのクリエイティブ活動そのものに価値を見出してくれる企業があるのか! という驚きがありましたね。

また、これまでずっと自分たちだけでやってきたものの、その延長線上に何があるのかが見えてしまった部分もありました。

それが、DNPと組むことで一気に可能性が広がった。まったく新しい挑戦ができるフェーズに入った感が強く、ワクワクしています。協業後も僕らはこれまでと変わらず、独立した運営体制で良いものづくりを進めていますが、感覚としては頼もしい親戚が増えたような感じですね。

他者とつながるから、面白いものが生まれる

——「CEKAI」では数々のクライアントワークを手がけていますよね。企業から要望が寄せられる中でのクリエイティブ制作に対して、お二人はどのように向き合っているのでしょうか?

井口 僕自身はアートやデザインというのは、他者と混じってゆるやかにつながるからこそ、新しいものが生まれると考えています。クライアントの課題や想い、自分にないアイデアなどが入ってくるからこそ、面白いものを生み出せるわけです。

 

加藤 僕はプロデューサーの立場で関わることが多いんですが、意識しているのは、「クリエイターがフラットにスキルを発揮できる状況を整えること」です。

要件定義や予算などをがちがちに固めてからスタートする案件もありますが、僕はできるだけ“余白”を残した状態でクリエイターに渡したいと思っています。また、例えば、「パンフレットをつくりたい」という依頼をいただいたときに、クライアントの目指すことを実現するには別のメディアのほうがいいと思ったら、「本当にパンフレットでいいんですか?」と、問いかけることもあります。

クライアント企業にしてみたら、やりにくさを感じることもあるかもしれませんが、一緒にアイデアをぶつけ合いながら共創していくことに意味があると思っています。

未来のキャンバスを作っていきたい

——今後はDNPと、どんなコラボレーションを実現していきたいですか?

加藤 DNPが世の中の課題として感じていることに、一緒に取り組んでいきたいですね。

「DX for CX」をとっても、人々がDXの恩恵を心地よく享受するために、クリエイティブが貢献できることはあると思います。例えば、スマートファクトリーをクリエイターの視点でデザインしてみると、コンテンツとしても楽しめる発想が出てくるかもしれません。

 

井口 僕は、研究開発を一緒にしたいですね。

映像作品を作っている中で、「いつまで、ディスプレイの16:9のフレームがあるんだろう?」と考えることがあります。技術の進化とともにキャンバスは変わっていくものです。ならば、そのキャンバス自体をつくりたい。

DNPは、ディスプレイ関連部材を製造していますよね。新しいモニターや装置を開発すれば、それに合わせてクリエイターの表現方法も変わっていきます。近い将来、映像をウェアラブルにできるかもしれないし、映像デザイナーの仕事はものが動くこと自体をデザインするようになっているかもしれません。

僕たちは、「将来当たり前になっているものを、今つくる」という理想を実現するために行動しているだけで、その先には理想が当たり前になっている未来があるはずです。新しいプラットフォームを開発して、未来のクリエイティブの多様な環境を生み出すことは僕たちの役目でもあると思っています。

例えば、水道をひねれば水が出るのってすごくありがたいことですけど、みんな当たり前に思っていますよね。僕らが「インフラをつくる」と言っているのは、そういう“社会の当たり前”をつくっていきたいということなんです。

 

加藤 それ、“未来のあたりまえをつくる。”っていうDNPのコーポレートアイデンティティと同じだよ?(笑)

井口 …マジで知らなかった(笑)。でも、僕たちがやりたいことは、まさに“未来のあたりまえをつくる。”で間違いないです!

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