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2021.1.26
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WILLから始まるオープンイノベーション【後編】

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後編では、現場で実感する大企業ならではのオープンイノベーションの壁や、自分たちが旗振り役を担う共創のスタートには何が必要かなど、引き続き、ビジネスデザイン本部リーダーの松嶋にインタビューしております。ぜひ最後までご覧ください!

 

■大企業がぶち当たるオープンイノベーションの壁「自分の”やりたい”が言えない」

 

−オープンイノベーションの現場では、大企業だからこそぶつかる壁や苦悩があると思います。現場で最初に感じた「自分が何をしたいか」を言えないことも、共創においてはひとつの壁になるのか。

オープンイノベーションを目的化している人が多い気がします。よく見るのは、企業同士がディスカッションする場で、自社のアセットをバーッと広げて見せて、うちにはこんなものがありますよ、どうですか、といった会社の商材紹介のような話をするケースです。

前段のWILLの話にも繋がりますが、自社のアセットをどう活用するかも必要だとは思いますが、オープンイノベーションをやるからには、少なくともそれを使って自分は何をやりたいのかを明示することが大切で、その主語は常に「個人」であるべきだと考えています。会社の意志だけではなく「あなたが」何をやりたいのか。僕はいつもそこを見るようにしています。

 

−一方で、企業文化的に自分の意志を発することに慣れていない人が多い場合や、組織的に意志を育てる難しさがある場合も多いように思います。

まさにそのとおりですね。意志を持つ次に大事なことは、アイデアや自分たちの取り組みのシェアをしっかりと行うことです。それは意志を発信することを意味しますが、多くの日本の大企業が特に苦手なところだと考えています。

そして、そもそも発信できない原因は「今まで考えてすらいなかった」ことが大半だと思っていて。例えば、顧客から受注するためにこの予算を使おうとか、こうしたら受注できるということは考えられても、自らこのプロダクトを社会にどう広げて課題を解決するのか、あるいはまだ世の中にないプロダクトを自ら作っていきたい意思をどう示すのか、そういった意志を育てたり、考える環境・場面が少ないことが問題です。従来から営業はこう、企画はこうという明確な役割があったことも原因の1つでしょう。さらに個人の力や意志のぶつかり合いを敬遠したり、意志を明確に示さなくてもやっていける仕事環境が多いことも原因だと思います。

 

■個人を強くする、チームのマインドセットづくり

 

 −ここまでのお話で「WILL」という個人の意志が、共創における大きなモチベーションにつながるとの考え方が伝わってきました。現在、新規事業創出を担うチームのマインドセットを育てる上で心がけていることはありますか。

この取り組みに関わるメンバーには「私は何をしたいのか」を端的に言えるようになってほしいと伝え続けています。前例のないものをつくっていく際に大事なことは、やはりその人の高いモチベーションを維持することだと考えているので、こういったマインドがちゃんとセットされると、様々な困難を突破し共創型の取り組みを実現できると思います。もちろん僕も含めてまだまだかもしれませんが、だからこそ自ら口にするうちに徐々に身についていくものだとも考えています。メンバーに自分のやりたいことをしっかりと見つけてもらって、言えるようになって、それに挑戦してもらうと。僕はそんな土壌を作っていきたいです。

 

−実際に、メンバーの個の力を育てる中ではどのような取り組みをしてきましたか。

例えば、去年は目標管理として「短所を克服してください」という目標を置いていました。長所を伸ばすのは当たり前だから、それはもう各自でやってくださいと(笑)一般的に多くの企業は、営業、企画、スタッフなどの間接部門のように機能ごとに部署が分かれていますが、ここではそういう分け方はせずに、スタートアップのようにひとりで色んな機能や役割を担うのが当たり前と考えてもらっています。今の部署で、もし10個の役割があったとして10人採用するなんてことはあり得ないので、個人でいろんなことをやれるようになろうと話しています。

 

個人がもっと強くならなければならない。そうでないと、オープンイノベーションの旗振り役は到底担えないと思っています。

 

DNP_ビジネスデザイン本部_松嶋

 

■「旗振り役はアセット紹介で終わらない」今、共に見直すオープンイノベーション

 

−これから「DNP INNOVATION PORT」が目指していく共創とは?

このサイトで、僕らのWILLを共創プロジェクトという形で前面に出していき、そこに集まってくれた同じく意志のある人や賛同してくれる人、そういう方々と一緒にビジネスを創っていきたいと考えています。この形であれば、スピード感をもって自分たちだけでは成し得ないことが出来る。今の時代、このように共創型でビジネスを進めるのが理に適っていると思います。

 

「共創」の概念は企業によっても、社内でも、人によってもまだまだ解釈が分かれるものです。社内外に対して、僕たちが考えている共創とはこうだ、としっかり伝えないと例えば権利関係で揉めることにもなりかねないし、後でいろんな相違が出てきてしまう。僕たちがやりたい共創では、一緒に取り組む方々と、共通の課題や目的といった共創の枠組み自体がしっかり共有化されていることが大前提です。

 

そして、共有された課題や目的を達成するには必ずリードを取る人が必要で、それこそがWILLのある人だと僕は思っています。これを解決するにはこうあるべきだと意志をもって発し、実現のために会社のリソースを使いながら最短距離を描ける人です。だから、個人がWILLを持つことが共創の第一歩ですね。今後は、WILLはどうやったら作れるのかという発信も積極的におこなっていきます。

 

共創ではどのような取り組みを増やしていきたいと考えているか。

その最短で描いた構図、構想の中にDNPだけでは出来ないものがあり、プロジェクトに共感してくれたスタートアップ企業、大企業などと一緒に、お互いができることと共通の枠組みを達成できて初めて、成し遂げたい何かを解決する、真に価値のあるサービスや製品が生まれると思います。

 

今まさに展開中の”Food Communication”のプロジェクトも、DNPだけでは食べ物を扱うことが非常に難しかったんです。でも、その枠組みに食領域のプロフェッショナルや、それを流通させるプロフェッショナルがいて、価値設計やマーケティング、プロモーションとして我々がいて、そういうことであればと乗ってくれるパートナーもいるわけで、一社では絶対にできなかったことが達成できる。そういう取り組みを、DNP INNOVATION PORTを通してどんどん増やしていきたいです。

 

最終的には、どの企業にも既存事業とは別に共創型の事業をおこなう組織があっていいと思っていて、だからDNPでもその建て付けを作っていきたいし、他企業でもそれが増えていったら、企業間のオープンイノベーションは、とてもやりやすくなっていきますよね。

 

 

−最後に、立ち上げから2年が経った今、改めてオープンイノベーションを試みるまたは実践中の企業の方々にメッセージをお願いします。

リーマンショックが起きたときも企業が変化する最後のチャンスと言われたし、スタートアップがぐんぐん伸びているときにも、オープンイノベーション戦略を取れるかどうかが生き残る最後のチャンスと言われたような…企業が激的に変化するチャンスがこれまでにも多くありました。そしてまた、今回のコロナウイルスにより、もう以前には戻れない中での最後のチャンスが来ています。自社だけでイノベーションを起こせている会社はいいのかもしれませんが、そうではない会社がほとんどなはずです。少なくとも今、DNPだけではなく様々な企業同士でオープンイノベーションを見直せる、考え直せる最後のチャンスと捉えています。

 

そのときに、そもそも共創やオープンイノベーションは何か、何が目的かといったベースの部分を今一度、みんなで目線を合わせたいですね。その目線が合ってくると、よくある「僕たちの会社にはこんなアセットがあるので、さあ皆さんどうですか」という目的の見えない自己紹介では終わらないと思うんです。この領域で何がやりたいのかをどこまで具体的にできるかで、共創の旗振りをできるかが見えてくる。今までそこが足りていなかったなら、DNPも含めてオープンイノベーションを一緒に見直しませんか、やり直しませんかと。今が再スタートできる最後のチャンスかもしれないということを伝えたいです。

DNP_ビジネスデザイン本部_松嶋