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2021.1.26
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WILLから始まるオープンイノベーション【前編】

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2019年にスタートした共創サイト「DNP INNOVATION PORT」。

今日までの間に、オールDNPのオープンイノベーションの取り組みがここに集まり活動を発信しているほか、本サイトを通して生まれた共創事例も出てくるなど、まさにDNPが掲げる「第三の創業」を実現するプラットフォームとして機能しています。

今回は、「DNP INNOVATION PORT」を立ち上げ、運営する情報イノベーション事業部ビジネスデザイン本部 リーダーである松嶋に、実際の事業構想の生み出し方、共創の旗振りに必要な個々人のマインドセットや、現場で実感する大企業ならではのオープンイノベーションの壁、DNP INNOVATION PORTにおける共創の考え方などをインタビューしましたので、ぜひご覧ください!

DNPビジネスデザイン本部松嶋亮平プロフィール

■「DNP INNOVATION PORT」共創が集まり生み出される場所

 

−最初に「DNP INNOVATION PORT」の取り組みについて教えてください。

共創サイト「DNP INNOVATION PORT」は、DNPが主導するオープンイノベーション活動において、現在取り組んでいる情報の発信やパートナー企業を募集する場です。僕たちは組織設立初期から、WeWorkをリアルの拠点として情報収集やネットワークの拡大、パートナー企業との出会いを目的に活動していましたが、その活動をオンラインにも広めることと情報発信の強化を目指して、2019年に当サイトを立ち上げました。

 

−オンラインでの活動拠点となる本サイトは、具体的にどのような機能を担っているか?

大きく2つの機能があり、「CO-CREATION」ではDNPが目指す新規事業構想やプロジェクト単位でその実現に必要な技術や機能、パートナーを具体的に明示・募集して、最適な共創が生まれるような情報を発信しています。「ASSET SUPPORT」では、DNPが保有するアセットプランを提示して、共創パートナーたちが自らの強みを伸ばすことに集中できるようなサポートの提供を目指しています。

 

−本サイトを運営するDNPのビジネスデザイン本部について教えてください。

ビジネスデザイン本部は、2018年10月に主に新規事業創出を目的として発足しました。共創によって社会に新しい価値を生むというビジネスのやり方が必要になってきている中で、手法もアセットもスキームも何もなく、まさに更地に立ち上がった部署でした。事業部横断的に約10名が集まり、今日までいくつもの共創事業づくりに取り組んできました。

 

−自分自身が、新規事業を生み出す側になったことについてはどう思ったか?

正直、良かったなと思っていました(笑)。僕はこの本部に来る前は事業企画本部という部署にいて、主に中期経営計画の策定やM&A、出資先の経営再建支援をしていました。そこでは、当然ながら事業部門にいたときよりも戦略的に、俯瞰的に会社を見る必要がありました。この厳しい事業環境の中で、抜本的に何か新しい取り組みをしなければならない、ということを考える日々でした。なので、実際にそれができる、しかも前例がない真っ白な部署である意味自由に戦略や施策を実行できる状況は、私にとってとても挑戦的かつ魅力的でした。

DNP_ビジネスデザイン本部_松嶋

■「このサイトは僕たちそのもの」個人の意志から始める共創プロジェクト


−「CO-CREATION」で募集をかけている数々のプロジェクトや事業構想は、どのようにして生まれているのか?

多くが、僕たちの成し遂げたい意志から生まれたプロジェクトです。メンバー個々人がやりたいこと、挑戦したいことがベースになっています。

部署の立ち上げ時に与えられたミッションは、新規事業をつくる、特にスタートアップ企業やネクストユニコーン企業との共創を試みるといったとてもフワッとしたものだったんです(笑)。当初の僕たちは、これから対峙する市場を知るために様々なイベントでピッチを聞いたり、参加者と名刺交換したりという、あるあるの動きをしていて。今でこそ思いますが、スタートアップ企業の方々はさぞかし迷惑だっただろうなと…(笑)。結局、その動きを重ねて気が付いたのは、現場にいる自分たち自身が「DNPとして何がやりたいのか、私たちは何をやりたいのか?」を全く話せていないということでした。

 

−「DNPが共創を通して何をしたいのか」を、メンバーが自分ごととして話せていなかったと。

もちろんフワッとは話せますが、個人としてやりたいことは、考えはあっても全く練れていなくて。要するに、意志=WILLがないことに気が付いたんです。恥ずかしい話ですが、相手からしても「一体何のために喋りかけてきたんだ?」みたいになるんですよね。

 

WILLがないとそもそも共創の土俵にすら上がれない、と早々に気がついた僕たちは、思い切って進め方を変えて、自分たちのやりたいテーマを起点にすることにしました。そのときに、業界や市場のリサーチ、グローバル動向などの分析やマーケティングなどはほとんどやりませんでした。この段階で重要なことは、そういったアプローチではないと決めたんです。どんなテーマであっても”自分で熱意を持って語れる何か”でないと結局今までと何も変わらない、どんなに考え抜いてもアイデアをブラッシュアップするうちに必ず変化が起こるので、スピードを重視しようと考ました。

 

−自分たちが主導で共創を実現するには、個々人のマインドセットやモチベーションも必要ということに気が付かれたんですね。実際はどのように「WILL」をつくっていったのでしょうか。

メンバーをいくつかのグループに分けてテーマ出しやディスカッションを重ねました。議論していく中で出てくる「私はそれはつまらない」とか「それはこうすべきだ」といった個人の意見を通じてアイデアを削ぎ落として「こんなことやりたい、あんなことできたらいいよね」を尖らせていきました。そうすると、アイデアへの愛着とともに徐々に自分たちのWILLが見えてきたんです。

 

−個人の意志とモチベーションをつくることで、共創現場での変化はありましたか。

WILLを持って挑むと、スタートアップの人たちと名刺交換をしたり話しかけたりするときも、こんなことやるってどう思いますか?そのためにはこれが必要なのでこの部分で協力してもらえませんか?と話を展開していけるようになりました。そうするうちに、自分たち自身が事業責任者、プロジェクトオーナーであるという自覚が生まれ始めましたね。

 

こうなるとスタートアップだけではなく大企業も巻き込めるようになってきて、共創の枠組みが次々と出来上がっていきました。今日まで、人の入れ替わりなどでチームが変化しても、個人のWILLから始めるというマインドセットは変わらず僕たちが持ち続けているものです。なので、DNP INNOVATION PORTは、私たちそのものを体現していると思っています。

 

−このDNP INNOVATION PORTが、メンバーそのものを体現しているとは?

前段で話したようにこのサイトを作った目的は、リアルの活動をWebで広く大きくいろんな人に伝えることでしたが、CO-CREATIONに掲載されているいくつかのプロジェクト、例えば”Food Communication”やBabyTechの取り組みは、まさに自分たちのWILLそのものです。

そのWILLをよりオープンに発信することで、自分たちのプロジェクトに興味がある、同じく意志を持った人や企業を呼び込みたいと思っています。そこから話が進めば一緒にやりましょうとなる。これこそがあるべき共創型の取り組みであり、このやり方そのものが僕たちの日々の活動です。このサイトは「自分たちでつくったWILLを発信していく」僕たちそのものを体現しているというイメージを持って運営しています。

DNP_ビジネスデザイン本部_松嶋

 

−お話を伺うまでは、なぜDNPが”Food Communication”やBabyTechの領域に着眼したのかを疑問に思っていましたが、そこに現場メンバーの意志が絡むとなると、また見え方も変わってきます。

その通りです。今は完全に個人のWILLでプロジェクトを構想しているので、今後もし新しいメンバーが来たら、例えば音楽のビジネスをやりたいという話になる可能性もあるし、基本的に僕はWILLがあればそれを否定はしません。DNPの印刷技術については一度目をつぶり、例えばその音楽で提供できる価値は何なのか、ビジネスという視点でどうなのかといった軸で考えて、やるかやらないかを評価していきます。

 

−意志とは別に、DNP本体の既存事業とのシナジーや、「ASSET SUPPORT」にあるようなDNPのアセットとの関連性からプロジェクトを構想することもありますか?

現時点では、本体の事業とマッチしているかどうかで有り、無しという考え方はしていません。アセットの広大さこそがDNPの最大の武器であると考えているので、新しいテーマを考えるときに「アセットの何が使えるか」は考慮しなくてもいいと思っています。何かを具体的に始めれば最終的には、それにはDNPのこれが使えるはずだと進めていけるので、いわゆる既存事業との相乗効果は考えずに構想できるところはありがたいですね。

だから、Food Communication、BabyTech、Sustainabilityなど、今掲載している各プロジェクトに脈絡は正直ないです(笑)。よく指摘されるところですが、逆に既存の枠にはめると、それならマーケティング系の製品・サービスを活用しよう、SDGs文脈でやろうなどと誰でも考える方向に行ってしまい、”イノベーション”が起きにくくなるんじゃないかと思うんです。シナジーを求めるなら“シナジーを求めない”ことが必要だと考えています。

>> 後編へ続く