- CO-CREATION
【共創事例】スポーツ全体の情報基盤を目指す!DNPとハンドボール協会が取り組むスポーツビジネスの土台づくり
DNPはスポーツ産業の振興や課題解決に取り組んでおり、2019年からスポーツ競技団体に向けた「DNPスポーツ情報管理サービス」を展開しています。今回は当サービスを活用した日本ハンドボール協会との取り組……
- CO-CREATION
ニュース
【Professionals in DNP】では、DNPの中で新規事業開発に携わる様々な“ヒト”にフォーカスを当て、事業にかける思いや裏側のストーリーをお届けします。
【この記事はこんな企業におすすめ!】
DNPは注文住宅などの商談に利用する住宅プレゼンテーションソフトのデータを、最短15秒(当社環境における試験による実測値)で高精細なVRに変換するソフトウェア「DNPバーチャルエクスペリエンス VRプレゼンゲートウェイ」を開発し、2022年11月に提供を開始しました。
本ソフトウェアは高精細なVR空間で自由に移動できることで、ハウスメーカー等による住宅プランの提案に関する施主の理解を促進し、打合せ時間の短縮・業務の効率化・成約率の向上など、営業活動のDX化を支援します。
今回は当事業の全体統括を担うABセンターXRコミュニケーション事業開発ユニットサービス開発部の山嵜秀城氏と、販促企画を担う石崎卓氏から、VRプレゼンゲートウェイの開発に込めた思いをお伺いしました。
(DNP ABセンター XRコミュニケーション事業開発ユニット サービス開発部 左:山嵜秀城氏 右:石崎卓氏)
山嵜:私はもともと画像処理や3Dのエンジニアとして技術開発に携わっていました。ABセンターでは3年ほどVR関連の企画開発に従事し、現在はVRプレゼントゲートウェイの統括として企画・販促をしています。VRの知見は多少ありましたが、住宅販売業界の知識はなく、ハウスメーカー向けにサービスを展開していくのは初めての経験でした。
石崎:私は別の事業部の企画部門で商品企画やセールスプロモーションに長く携わり、セールスプロモーションの企画やデザインや広告写真のディレクターを務めていました。メーカーが生活者に対してどんなコミュニケーションを取り販売していくかは学んでいましたが、住宅販売業界は山嵜同様に知見はありませんでした。
山嵜:DNPはもともと独自の技術でハイクオリティなVR開発を行っており、たとえば自動車やマンションのショールームで利用されるようなセールス向けサービスの販売をしていました。ただ、制作には時間とコストがかかり、マッチする市場ニーズは限定的でした。もっとVRの技術を幅広く利用できないかとリサーチをしていくなかで、ハウスメーカーやリフォーム会社からお話を聞くと、施主それぞれの注文内容に対応して個別に提案ができるようなVR技術を求める声が非常に多かったんです。その要望に答えるためにVRプレゼンゲートウェイがアイデアとして生まれました。
石崎:高級マンションの物件提案で必要とされるような最高画質なものではなく、注文住宅の商談の場で施主の要望にフレキシブルに応えて住宅プランのイメージを共有するために、速くて必要十分なクオリティのVRがあればという声に応えたという経緯です。注文住宅の業界では住宅プレゼンテーションソフトが普及していて、図形を組み合わせていくような感覚で、施主と打ち合わせしながら簡単に3Dの間取りを制作できます。VRプレゼンゲートウェイは、「速さ」に特化した開発をしており、データをVRに変換する処理時間が最短15秒ということが最大の特長です。
注文住宅の打ち合わせでは、施主の要望に合わせて間取りなどを変えていきます。一般的なパース画像では描き直しに時間を要してしまうため、その打合せ時間内では変更をイメージで確認出来ないことが課題でした。
山嵜:ハウスメーカーは商談の際に平面図か簡単なCGパース画像を見せて提案していきます。ただ、それだけでは施主が実際の住宅のイメージをしづらいという声がありました。
石崎:注文住宅はご家族のこだわりを持って建てられるのがポイントなのに、具体的にビジュアルでイメージできないのはとてももったいないですし、商談も非効率ですよね。そのような課題を解決できればと思っています。
山嵜:CGやVRの技術はDNPのエンジニアやデザイナーがいままで培ってきたものがあり、それらをモジュール化し表現できるのがDNPの強みです。VRプレゼンゲートウェイは高精細なVRを生成出来ますが、一番重視しているのは変換の速さですので、フォトリアルと言われるクオリティでなくてもいいと考えています。VRといえばアートやエンターテイメントの領域で高精細な表現として利用されることが多いですが、VRプレゼンゲートウェイは業務用ツールとして機能特化して開発したのがポイントです。VRプレゼンテーションゲートウェイと同等な高精細VRは一般的に市場に流通している中で、我々は少し違った視点で戦うことで、今まで解決できていなかったニーズに応えようとしています。
そんな思いを、社内の開発メンバーとも密に共有し、彼らが中心となってシステム開発をしています。開発メンバーが形にしてくれたものを、私たちがお客様と相対しながらニーズを確認し、その声をもとにまたシステムを改善していく、というチームワークでVRプレゼンゲートウェイは作られています。
山嵜:住宅プレゼンテーションソフト「Walk in home(ウォークインホーム)」の開発元である株式会社DTS様に協力いただき、ユーザー企業および販売会社の5社でテストマーケティングを実施しました。もともと現場からは「平面図では住宅のイメージを伝えづらい」という課題を聞いていましたが、VRプレゼンゲートウェイを活用すると、施主にとって驚くほどわかりやすくなったと喜んでいただきました。
そして、商談の場以外にも効果があるという新しい価値の発見にも繋がりました。一般的にVRは変換に1〜2時間ほど要していましたが、VRプレゼンゲートウェイでは最短15秒で施主にご提案できるので、業務効率や契約率の向上に寄与できるということが、テストマーケティング後のヒアリングを通してわかってきました。我々は施主の顧客満足度を上げるサービスとして開発していましたが、DXツールとしても活用できるという発見がありましたね。
石崎:VRプレゼンゲートウェイの利用シーンの解像度が高まったことも、新しい気づきでした。当初、本契約後に施主と設計者との打ち合わせで、相互の認識に齟齬が生まれないようにする効果が喜ばれるのではと思っていました。しかし、テストマーケティングでは商談の前半、つまり施主との契約を獲得するための提案シーンで営業の方が利用したいという意見が多かったです。“契約に繋がる武器”としてのニーズがあることを知ることができました。
山嵜:まずは契約を決めることが重要なので、商談の際に施主がイメージする住宅を再現して提案できるということがリアルな現場でニーズが高かったということです。
石崎:どの業界でもお客様とのコミュニケーションの質が商談の成否に影響することは言うまでもありません。VRプレゼンゲートウェイは、誰でも簡単に操作できるゲームコントローラーでVR空間の中をウォークスルーできます。実際に打ち合わせで施主の方がすぐに操作に慣れて、どんどん動かして楽しんでくれたというエピソードも聞いています。楽しく打ち合わせできるコミュニケーションツールとしてもお役に立てたら嬉しいです。
山嵜:住宅販売業界への挑戦が初めてでしたので、パートナーである住宅プレゼンテーションソフトメーカー様には業界について教えていただき、活用してくださるユーザー企業様も紹介していただきました。また、VRプレゼンゲートウェイは住宅プレゼンテーションソフトで作成したデータを書き出して、VRに変換する仕組みのため、住宅プレゼンテーションソフトメーカー様の開発担当者の方と我々の開発チームで正しく処理し変換できるかのテストも共同で取り組みました。
山嵜:VRプレゼンゲートウェイが対応している住宅プレゼンテーションソフトは現状一種類ですが、今後は他の住宅プレゼンテーションソフトにも対応させてユーザーを広げていきたいですね。また、注文住宅以外にリフォーム業界にもマッチするのではないかと考えています。共創パートナーとなってくださる企業様と、VRプレゼンゲートウェイの技術を用いて新しい領域にも挑戦していきたいです。
石崎:住宅業界以外への広がりも作りたいです。大型建設や一般的なメーカー企業でも設計の現場でCADが利用されているので、VRを活用できる領域があれば関わる業界の幅は広がると思います。注文住宅の場合は速さがとにかく重要ですが、業界によってはニーズや課題も違う可能性もあるので、今後リサーチしていきたいです。
VRプレゼンゲートウェイは、現在はショールーム等で活用して頂いていますが、今後はメタバースとの連携も視野に入れて、インターネット対応のクラウド版の開発を進めています。営業の方がPCやタブレットでVRプレゼンゲートウェイを用いて商談ができるようになることで、業務効率がさらに上がると考えています。また、我々の組織であるXRコミュニケーション事業開発ユニットではXR事業を展開しており、VRプレゼンゲートウェイとメタバースを連携し、シナジーを出していくことで更なる事業拡大を目指していきたいです。
<取材・編集:多葉田愛/撮影・執筆:三浦えり>
「VRプレゼンゲートウェイ」の導入や、システムを活用した共創に興味のある企業やご担当者の方は、ぜひコチラからお気軽にお問合せください!